久しぶりの外食だった。
仕事終わりで、かなり疲れていた。
だから恋人と、
「今日はちょっといいもの食べようか」って話になって、駅前の人気店に入った。
店内は混んでいたけど、
雰囲気は良かった。
料理も美味しそうで、
その時は普通に楽しい夜になると思っていた。
隣の席には、小さい子どもを連れた家族がいた。
三歳くらいの男の子。
少し落ち着きはなかったけど、
まあ小さい子だし、そのくらいは気にしていなかった。
問題が起きたのは、料理が届いた直後だった。
子どもが急に立ち上がって、
こっちのテーブルを覗き込んできた。
子ども:「これなにー?」
親:「座って〜」
声はかける。
でも、止めない。
嫌な予感がした。
次の瞬間——
子どもが私の料理に手を伸ばした。
「あっ…!」
間に合わなかった。
指が料理にべたっと触れた。
しかもそのまま、
ソースのついた手で私の服を掴んだ。
白いシャツに、
茶色いソースがついた。
一瞬、頭が真っ白になった。
子どもは悪気なく笑ってる。
でも親は——
「あーもう、だめだよ〜」
それだけ。
謝らない。
立ち上がりもしない。
恋人も固まっていた。
周りの客も気づいていたと思う。
でも誰も何も言わない。
あの空気。
“子ども相手だから我慢しろ”みたいな空気。
正直、かなりきつかった。
でもこっちも強く言えない。
子どもに怒れば悪者。
親に言えば揉める。
結局、黙るしかない。
その時だった。
店員さんがすぐに来た。
状況を見て、
一瞬で全部察した顔だった。
「大丈夫ですか?」
その一言だけで、
ちょっと救われた気がした。
すると親が先に言った。
「子どもなんで〜」
まるで、
それで全部終わるみたいに。
でも店員さんは笑わなかった。
静かに言った。
「申し訳ありません。お召し物、お汚れしてしまいましたよね」
ちゃんと、
“被害があった側”を見てくれた。
それだけで全然違った。
さらに店員さんは続けた。
「こちらのお料理、新しいものをお持ちします」
私は慌てて、
「いや、大丈夫です」って言った。
でも店員さんは首を振った。
「こちらの不注意でもありますので」
その対応が、本当に完璧だった。
親の方は、
少し気まずそうな顔をしていた。
でも最後まで、
ちゃんとした謝罪はなかった。
「すみませんねぇ〜」
軽く笑いながら、それだけ。
正直、モヤモヤは残った。
でも——
新しい料理が運ばれてきた時、
ちょっと泣きそうになった。
たぶん料理じゃない。
“ちゃんと嫌だったですよね”って、
認めてもらえた感じがしたんだと思う。
子どもは悪くない。
興味を持つのも自然。
でも——
だからって、
周りが全部我慢するのが当然になるのは違うと思う。
あの日一番ありがたかったのは、
店員さんが“空気”じゃなくて、ちゃんと状況を見てくれたことだった。
我慢してる側って、
大体いつも黙ってる。
空気を壊したくないから。
でも本当は、
笑って許してるんじゃなくて、
耐えてるだけの人もいる。
これ、どう思う?
「子どもだから仕方ない」って、
どこまでなら許せる?
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