その日は、少し混んだ電車だった。
満員というほどではないけれど、座席はほとんど埋まっていて、立っている人も何人かいた。
私はドアの近くに立ちながら、何となく車内を見ていた。
すると、向かい側の座席に座っている親子が目に入った。
最初に気になったのは、子どもの足元だった。
小さな子どもが、靴を履いたまま座席の上に立っている。
窓の外を見たいのだろう。
両手を窓につけて、ぴょんぴょん跳ねるように外を眺めていた。
その隣にも、もう一人の子どもがいた。
その子も同じように座席の上に立ち、靴の裏をシートにつけたまま体を乗り出している。
私は一瞬、親がすぐに注意すると思った。
「ほら、靴脱ぎなさい」
「座席の上に立っちゃだめでしょ」
そういう声が聞こえてくると思っていた。
でも、何もなかった。
親らしき男性は座席に座ったまま、子どもたちの様子を見ている。
隣の女性も、特に止める様子はない。
私は最初、口を出すべきか迷った。
子どもはまだ小さい。
窓の外を見たくなる気持ちも分かる。
親も疲れているのかもしれない。
でも、そこは公共の座席だ。
次に座る人がいる。
スーツの人かもしれないし、高齢者かもしれない。
誰かがその汚れた場所に、何も知らずに座るかもしれない。
そう思って見ていたら、片方の子の靴が座席の背もたれにこすれた。
その瞬間、私は我慢できなくなった。
「ちょっと!靴のまま座席に立たないで!」
思ったより大きな声が出た。
子どもたちはびくっとして、こちらを見た。
車内の何人かも、私の方を振り返った。
私は続けて言った。
「ここ、みんなが座る場所だから。靴のままはやめようね」
本当は、できるだけ優しく言うつもりだった。
でも、最初の声が少し強くなってしまったせいで、空気が一気に張りつめた。
すると、横に座っていた親らしき男性が、ゆっくりこちらを見た。
私は、謝られると思っていた。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://twitter.com/tanakaseiji14/status/2051574301342712270?s=46,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]