あれは、高校生のとき。
初めて一人で新幹線に乗った日だった。
正直、かなり緊張してた。
ホームに立ってるだけで、ちょっと怖かった。
指定席の車両に入って、
自分の座席番号を確認して——
「あれ?」
そこに、年配のご夫婦が座ってた。
一瞬、固まった。
でも、このまま立ってるわけにもいかない。
小さく息を吸って、声をかけた。
「すみません、ここ…私の席なんですけど」
できるだけ丁寧に言ったつもりだった。
すると、すぐに返ってきた。
「これ1本前のだよ。もう出たよ」
……え?
一瞬で、頭が真っ白になった。
「え、そうなんですか…?」
反射的にそう返してしまった。
だって、相手は大人で、
しかも年配の方だったから。
自分が間違えたんだって、
その場で思い込んだ。
「すみません…」
そう言って、私は一度席を離れた。
デッキに出て、
急いでチケットを見直した。
車両番号。
座席番号。
時間。
何回見ても——
「……合ってる」
心臓がドクンと鳴った。
じゃあ、さっきのは?
もう一度戻るべきか。
でも、さっきの空気を思い出すと怖い。
それでも、勇気を出して、戻った。
ドアを開けた、その瞬間だった。
「これ、あんた達が間違ってるよ!」
車内の空気が、さっきと違った。
周りの席にいた大人たちが、
はっきりそう言っていた。
「その切符、次の便だよ」
「この子の席でしょ」
一気に、状況が逆転した。
ご夫婦は一瞬固まって、
慌ててチケットを見直していた。
「あっ……あら、ごめんなさいねぇ」
さっきまでの強い口調は消えて、
少し気まずそうに立ち上がった。
そのまま、そそくさと降りていった。
私は、その場に立ったまま、動けなかった。
でも——
さっきまで感じていた不安が、
全部ふっと消えた。
見知らぬ大人たちが、
ちゃんと味方してくれた。
それが、すごく心強かった。
あのときの安心感は、
今でも忘れられない。
新幹線の中で、
あんなにホッとしたことはなかった。
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