家の前の道路で、いつものようにタバコを吸っていた。
別に誰かの玄関先に灰を落としたわけでもない。
大声で騒いだわけでもない。
缶コーヒーを片手に、仕事の合間の数分をぼんやり過ごしていただけだった。
十二年以上、同じような場所で同じように吸ってきた。
朝の空気が少し冷たい日も、夏の夕方に汗を拭きながら吸った日もある。
近所の人が通れば軽く会釈した。
自分としては、迷惑をかけているつもりはなかった。
だから、その日も何も考えていなかった。
いつもの一服。
いつもの道路。
いつもの家の前。
そのはずだった。
吸い終わる少し前、区の職員らしき人に声をかけられた。
「こちら、公共の場所での喫煙になります」
最初、何を言われているのか分からなかった。
私は思わず自分の家を指さした。
「いや、家の前なんですけど」
すると相手は、落ち着いた声で言った。
「道路上ですので、条例違反になります」
その瞬間、頭の中で何かが止まった。
家の前。
でも道路。
道路だから公共の場所。
公共の場所だから喫煙禁止。
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