会計窓口の前で、私はぼんやり番号札を握っていた。
午前中の病院は、独特の疲れた空気がある。
消毒液の匂い。
遠くで鳴る呼び出し音。
杖をつく音。
小さな咳。
受付の人の淡々とした声。
私はただ、診察が終わった安堵感と、いくら支払うのかという少しの緊張を抱えて、椅子に座っていた。
その時、窓口に貼られた一枚の紙が目に入った。
白い紙に、太い黒文字。
飾りもない。
可愛いイラストもない。
優しい言い回しもない。
ただ、正面から殴ってくるような文章だった。
「あなたの治療費の9割は日本の若者が生活を切り詰めて負担しています」
私は一瞬、目をそらせなかった。
会計窓口に貼るには、あまりにも直球すぎる。
病院でよく見る貼り紙といえば、「マスク着用をお願いします」とか、「保険証をご提示ください」とか、せいぜいその程度だ。
でもこれは違う。
支払いの瞬間に、こちらの心の奥に手を突っ込んでくるタイプの貼り紙だった。
隣に座っていた高齢の男性が、診察券をいじりながら言った。
「最近は湿布も薬も高いねえ」
その横で、別の人が答えた。
「でもまあ、保険があるから助かるよ」
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