葬儀が終わってから数日、家の中はずっと静かだった。
人がたくさん出入りしていた時のざわめきが嘘みたいに消えて、残ったのは線香の匂いと、使われなくなった湯のみと、片付けきれない書類の山だけだった。
私はまだ、現実に追いついていなかった。
役所の手続き。
銀行の連絡。
保険の確認。
親戚へのお礼。
やることは山ほどあるのに、心だけが一歩も動かない。
そんな時だった。
郵便受けに、一通の封筒が入っていた。
差出人に見覚えはない。
けれど、宛名は確かにうちだった。
私は何気なく封を開けた。
その瞬間、胃の奥が冷たくなった。
手紙は、やけに丁寧な文面で始まっていた。
「突然のお手紙、失礼いたします」
そう書いてある。
けれど読み進めるほど、内容はどんどん気味の悪いものに変わっていった。
亡くなった家族が利用していた貸しスペースを片付けたところ、違法なDVDらしきものが出てきた。
それをこのまま警察に届ければ、故人の名誉に関わる。
家族にも迷惑がかかる。
だから、内々に処分してやる。
その代わり、指定された金額を振り込め。
そんな話だった。
私は手紙を持ったまま、しばらく動けなかった。
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