あの日から、家の空気が変わった。
いや。
本当はもっと前から壊れていたのかもしれない。
ただ、
誰も見ようとしなかっただけだ。
弟は昔からおかしかった。
突然怒鳴る。
何日も笑い続ける。
壁に向かって一人で喋る。
中学に入る頃には完全に周囲と噛み合わなくなり、
高校もまともに通えなかった。
そして診断名。
統合失調症。
そのまま長期入院になった。
正直、
俺は少し安心していた。
家が静かになったからだ。
母親は泣いていた。
父親は黙り込んでいた。
妹だけが、
ずっと弟を待っていた。
「お兄ちゃん、今日は元気かな」
そう言いながら、
面会の日を楽しみにしていた。
その頃から、
少し変だったのかもしれない。
でも誰も、
そこまで深く考えていなかった。
弟の症状が落ち着き始めた頃、
病院は外泊許可を出した。
月に一回だけ、
家へ帰ってくるようになった。
久しぶりに帰ってきた弟は、
別人みたいだった。
妙に自信満々で、
やたら偉そう。
しかも、
俺にだけ異常に攻撃的だった。
「フリーターが偉そうに」
「まだ親の世話になってんの?」
いや、
お前にだけは言われたくない。
でも俺は黙っていた。
揉めるのが面倒だったから。
その代わり、
弟は妹には異常なくらい優しかった。
肩を抱く。
髪を触る。
抱きつく。
普通の兄妹の距離じゃなかった。
母親は何度も注意した。
でも妹は、
嫌がりながら笑っていた。
「やめてよ、お兄ちゃん〜」
そう言いながら、
どこか嬉しそうだった。
気持ち悪かった。
でも、
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