祇園にある「女性3人以上で宿代無料」の民宿が予約の時点で嫌な予感がした。
女子旅で京都に行くことになった。
「女性3名以上で宿代無料」
「無料!?ラッキーじゃん」
「なんで女性だけ無料なんだろう」
「気にしすぎだよ。安いんだからいいじゃん」
予約の電話をかけた。出たのは中年の男性だった。
「女性3名様ですね。ちなみに、みなさんおいくつですか」
「え、年齢ですか」
「若い方だと特典もありまして」
その質問に違和感を覚えた。年齢を聞く必要がどこにあるのか。
当日、宿に着いた。古い町家を改装した雰囲気のある建物だった。
でも中に入って、さらに引っかかった。
「お部屋こちらです。あ、鍵はないんですよ。うちはアットホームなので」
客室に鍵がなかった。
「夜は私も同じ階にいますから。何かあったら、いつでも声をかけてください」
宿主がやたらと距離を詰めてくる。
「今夜、下で一緒に飲みませんか。若いお客さんと話すの好きなんですよ」
友達は「親切な人だね」と言っていた。でも私は警戒していた。
部屋に荷物を置いて、三人で話した。
「ねえ、この宿おかしくない?」
「そうかな。無料だし、いい人そうじゃん」
「無料の理由がまだわからない。鍵もない。年齢も聞かれた。飲みにも誘われた」
一つずつ挙げると、友達の顔も曇ってきた。
私は宿の口コミをもう一度調べた。
高評価に混じって、一件だけ消されかけた投稿があった。
「女性は泊まらない方がいい。夜、部屋の前に人の気配がした」
それで決めた。
「ごめん、私ここ泊まりたくない。別の宿にしよう」
友達もうなずいた。
宿主に告げた。
「すみません、予定が変わって今夜は泊まれなくなりました」
宿主の表情が一瞬で変わった。
「え?もう部屋も用意したのに。キャンセル料いただきますよ」
「予約時にキャンセル料の説明はありませんでした。無料の宿にキャンセル料もおかしいですよね」
「いや、それは」
「それに、鍵のない客室に女性だけを無料で泊める理由、こちらは何も聞いていません」
宿主が黙った。
私たちは荷物を持って、その場を出た。
その足で駅前のホテルに移った。少し高かったけど、鍵のかかる部屋でぐっすり眠れた。
安すぎる話には、必ず理由がある。
そして違和感は、だいたい正しい。
「気にしすぎ」で流さなかったことが、その日、私たちを守った。
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