コンビニで、醤油だけを一本買った。
本当にそれだけだった。
おにぎりでもない。
弁当でもない。
カップ麺でもない。
レジに持っていったのは、500mlの醤油一本。
店員さんは、まだ慣れていない感じだった。
でも対応は丁寧で、袋に入れる時もちゃんと確認してくれた。
「袋、いりますか?」
「お願いします」
それだけの、普通のやり取り。
醤油一本だけなのに袋に入れてもらうのも、少し申し訳ない気がした。
でもその日は他にも荷物があったから、まあいいかと思ってそのまま受け取った。
家に帰って、テーブルの上に袋を置いた。
中から醤油を取り出そうとして、ふと見えた。
白い袋の中に、何か細長いものが入っている。
最初はレシートかと思った。
でも違った。
ストローだった。
しかも、ちゃんと一本。
きれいに袋の横に差し込まれていた。
その瞬間、しばらく固まった。
「……醤油に?」
思わず声が出た。
いや、もちろん分かっている。
たぶん店員さんは、いつもの流れで入れてくれただけだ。
飲み物を買った人にはストロー。
弁当を買った人には箸。
デザートを買った人にはスプーン。
そういうルールが頭に入っていて、手が勝手に動いたのかもしれない。
でも、目の前にあるのは醤油。
しかも特選醤油。
これにストローが付いている光景が、じわじわ来る。
「新しい飲み方を提案されたのか」
「沖縄ではそういう文化があるのか」
「いや、さすがにないだろ」
一人で変なツッコミを入れてしまった。
別に怒るような話ではない。
むしろ、ちょっと笑ってしまった。
たぶん店員さんも忙しかったんだと思う。
レジでは次々にお客さんが来る。
袋に入れて、会計して、ポイントカードを聞いて、温めるか確認して、箸やストローを付ける。
その流れの中で、醤油が一瞬だけ“飲み物”に見えたのかもしれない。
そう考えると、なんだか責める気にはなれなかった。
むしろ、家のテーブルに置かれた醤油とストローの組み合わせが、妙に完成されていて笑える。
醤油一本だけ買ったはずなのに、
なぜか「どうぞ、お召し上がりください」みたいな顔をしている。
もちろん飲まない。
飲めるわけがない。
でも、こういう小さな間違いって、あとから思い出すとちょっと面白い。
店員さんが適当だったというより、
一生懸命やっていた結果、少しだけ方向を間違えた感じ。
怒る人もいるかもしれない。
「ちゃんと商品を見て」と思う人もいると思う。
でも自分は、袋を開けた瞬間のあの違和感だけで、ちょっと得した気分になった。
コンビニで醤油だけ買ったら、ストローが付いてきた。
たったそれだけの話なのに、
写真に撮ると妙に強い。
世の中、こういうどうでもいいミスくらいで笑える日があってもいいと思う。
ただ一つだけ言うなら、
このストローの正しい使い道だけは、最後まで分からなかった。
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]