娘が財布を落とした。
連絡を受けた時、最初に思ったのは、
「カードだけでも止めなきゃ」だった。
財布の中には現金が14000円。
それからキャッシュカード、その他いくつか大事なものが入っていたらしい。
落とした場所もはっきりしない。
いつなくしたのかも曖昧。
本人はかなり落ち込んでいた。
「もう現金はないよね……」
そう言いながら、スマホでカードの停止方法を調べていた。
私は慰めるつもりで、
「財布そのものが戻ってくるだけでもありがたいよ」
と言った。
でも、内心では同じことを思っていた。
現金は、たぶん無理だろうな、と。
今の時代、日本だから大丈夫なんて簡単には言えない。
落とし物が戻ってくる国だとは言われるけれど、それでも財布の中身まで全部残っているとは限らない。
拾ってくれた人がいい人だったらいいな。
せめてカード類だけでも戻ってきてくれたら。
そんなことを考えていたら、警察から連絡があった。
「財布が届いています」
その瞬間、娘の顔がぱっと明るくなった。
すぐに取りに行くことになった。
帰ってきた娘は、玄関を開けるなり言った。
「全部あった」
私は思わず聞き返した。
「全部?」
「うん。カードもあるし、現金もある」
それを聞いて、胸の奥がふっと軽くなった。
よかった。
本当によかった。
拾って届けてくれた人がいたんだ。
それだけでありがたかった。
ところが、娘は財布を見ながら、少し不思議そうな顔をしていた。
「でもさ……」
「なに?」
「お金が変なんだよね」
一瞬、意味が分からなかった。
「変って、少なくなってるの?」
「いや、金額は合ってる」
財布の中には、たしかに14000円あった。
ただし、落とした時とは形が違っていた。
娘の記憶では、財布に入っていたのは1000円札が14枚。
細かい支払い用に入れていたらしい。
でも戻ってきた財布の中には、
10000円札が1枚。
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