丸亀製麺で、ただ普通にうどんを食べようとしただけだった。
トレーに乗っていたのは、うどんが一杯。それから、天ぷらがひとつ。
別に豪遊したわけでもない。家族全員分をまとめ買いしたわけでもない。昼にサッと食べる、いつもの一人ごはん。
だからレジに進んだ時も、何も考えていなかった。
「お願いします」
そう言ってトレーを出した瞬間、店員さんがいつものように画面を確認して、明るい声で言った。
「それでは、お会計4920円になります」
……え?
一瞬、耳がバグったのかと思った。
492円じゃなくて?920円でもなくて?4920円?
目の前にあるのは、どう見ても一人分のうどん。高級天ぷらの盛り合わせでもなければ、牛肉山盛りでもない。むしろ、かなり控えめな注文だった。
私は思わず、トレーを二度見した。
いや、増えてない。うどんは一杯。天ぷらもひとつ。
「え、4920円ですか?」
できるだけ落ち着いて聞き返したつもりだった。でも声は、たぶん少し裏返っていた。
店員さんも少し不思議そうな顔をして、画面を見直した。
「はい、先ほどのお客様とまとめてでは……」
その言葉を聞いた瞬間、全部わかった。
あ、これ、前のお客さんの分が一緒になってる。
しかも、ただの一品二品ではない。金額からして、おそらく4人分くらい入っている。
私はすぐに言った。
「関係ない人ですね」
その瞬間、店員さんの顔色が変わった。
「……えっ」
そして、次の瞬間。
「お客様ぁあああ!!」
と言わんばかりの焦り方で、店員さんが慌てて会計を確認し始めた。
いや、わかる。忙しい時間帯なら、こういうこともある。前のお客さんが家族連れだったのか、グループだったのか、会計処理の流れで一緒になってしまったのかもしれない。
でも、こちらとしては心臓に悪すぎる。
うどん一杯のつもりでレジに立ったら、突然4920円。しかも、その中身が赤の他人のうどん代。
気づかずに払っていたら、あとでレシートを見て固まっていたと思う。
「え、私、今日そんなに食べた?」「もしかして丸亀っていつの間に高級店になった?」「いや、でもトレーの上にはうどん一杯しかないよな?」
そんなことを、店の外で一人で考え込んでいたかもしれない。
今回はその場で気づけたからよかった。
でも、キャッシュレス決済で何も見ずにピッと払う人だったら、もしかすると気づかないまま通っていた可能性もある。
店員さんを責めたいわけではない。むしろ、気づいた後の慌て方を見ると、本当にただのミスだったんだと思う。
でも改めて思った。
レジの金額って、ちゃんと見た方がいい。
特に、いつも行く店ほど油断する。「だいたいこのくらいだろう」と思って、金額を流し見してしまう。
コンビニでも、スーパーでも、飲食店でも。自分の前の会計が残っていたり、商品が二重に入っていたり、割引が反映されていなかったり。小さなミスは、意外とどこにでもある。
もちろん、人間がやっている以上、ミスはある。でも払う側も、最後の確認だけはした方がいい。
今回の私は、危うく赤の他人4人分のうどん代を支払うところだった。
それにしても、うどん一杯で「4920円です」と言われた時の衝撃は、しばらく忘れられない。
一瞬、本気でこう思った。
「私、いつの間にそんなに食べた?」
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