高校生のとき、コンビニでバイトをしていた。
今みたいに何でもスマホで買える時代じゃなかったし、俺にとってバイト代は本当に大事なお金だった。
時給は650円。
たった1時間働いても650円。
学校が終わってから制服を着替えて、レジに立って、品出しをして、床を拭いて、ようやく少しずつ貯まっていくお金。
その頃、付き合っていた彼女の誕生日が近かった。
高いものを買えるわけじゃない。
でも、ちゃんと自分で稼いだお金でプレゼントを買いたかった。
だから、使わずに貯めていた。
1万円。
大人から見たら、そこまで大きな金額じゃないかもしれない。
でも高校生の俺にとっては、何日も働いてやっと手にした大金だった。
ある日、バイトが終わってロッカーを開けた瞬間、頭が真っ白になった。
封筒がない。
何度もカバンの中を見た。
制服のポケットも探した。
ロッカーの奥も、床も、何回も見た。
でも、ない。
俺の1万円が消えていた。
「はにゃ……?」
本当にそんな変な声が出た。
最初は信じられなかった。
自分がどこかに置き忘れたんじゃないか。
勘違いじゃないか。
そう思いたかった。
でも、どう考えてもロッカーに入れていた。
その瞬間、胸の中が一気に冷たくなった。
誰が取ったんだろう。
一緒に働いている人たちの顔が頭に浮かんだ。
でも、疑いたくなかった。
いつも一緒にレジに入っている先輩。
品出しを教えてくれたおばちゃん。
休憩中にジュースをくれた大学生の兄ちゃん。
誰かを疑うのが、何より嫌だった。
それでも悔しくて、オーナーに言った。
「ロッカーに入れてた1万円がなくなりました」
するとオーナーは、俺の顔をじっと見て、少し間を置いてから言った。
「鍵かけてないお前が悪い」
その一言で、何も言えなくなった。
たしかに正論だった。
鍵をかけていなかった。
不用心だった。
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