正直に言うと、最初は完全に店のネタだと思っていた。
だって、入口に貼ってあるポスターがあまりにも本気すぎたからだ。
赤い背景に大きな文字で、
「指名手配」。
その下には、ピザをくわえたリスの写真。
しかも、まるで防犯カメラ映像みたいに、
「CAMERA 4」
「REC」
なんて表示まで入っている。
いや、作り込みが細かすぎる。
友人はそれを見た瞬間、スマホを取り出して笑った。
「これ、絶対AIで作ったやつでしょ」
「いや、でも店がここまでやるってことは、何回か被害出てるんじゃない?」
「リスに?ピザを?そんな漫画みたいなことある?」
私たちは完全に笑っていた。
そのときはまだ、ポスターの下に書かれていた注意書きを、本気で読んでいなかった。
「お食事を狙われないようご注意ください!」
この一文が、数分後にどれほど重要な警告だったか。
私たちはまだ知らなかった。
案内されたのはテラス席だった。
天気もよくて、風もちょうどいい。
木が近くにあって、少しだけ森の中のカフェみたいな雰囲気がある。
友人は席に座るなり、また入口のポスターの話を始めた。
「もし本当に来たらどうする?」
「写真撮るでしょ」
「いや、まずピザ守れよ」
「でも“非常にカワイイ”って書いてあったし、怒れないかも」
そんなことを話していると、店員さんが水を持ってきた。
私は冗談半分で聞いてみた。
「あのポスター、本当にいるんですか?」
すると店員さんは、まったく笑わずに言った。
「います」
一瞬、空気が止まった。
「え、本当に?」
「はい。かなり慣れています」
「慣れてる?」
「はい。隙を見ます」
隙を見るリス。
その言葉だけで、もう普通のリスではない気がした。
店員さんはさらに小声で続けた。
「特に、ピザが運ばれてきた直後が危ないです。写真を撮っている間とか、飲み物を取ろうとした瞬間とか」
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