「ごめん、その音……少しだけ苦手で」
私がそう言った瞬間、昼休みの空気が止まりました。
同僚が食べていたのは、コンビニで買ったおにぎり。
別に悪いことをしているわけじゃない。
むしろ普通です。
ただ、私にはその咀嚼音がどうしても耐えられませんでした。
クチャ、という音が聞こえた瞬間、
背中に力が入る。
指先が冷たくなる。
頭の中がその音だけでいっぱいになる。
逃げたい。
でも逃げたら変な人だと思われる。
そう考えているうちに、体がどんどんこわばっていく。
それが毎日でした。
でも同僚は笑いました。
「え、そんなことで?」
「気にしすぎじゃない?」
「社会人なんだから我慢しなよ」
その言葉に、私は何も返せませんでした。
だって、自分でもそう思っていたからです。
私はおかしいのかな。
みんなが平気な音に、どうして私だけこんなに反応するんだろう。
子どもの頃からそうでした。
家族が麺をすする音。
鼻をすする音。
鉛筆で机をカリカリする音。
聞こえた瞬間、怒りに近い感情がこみ上げる。
でも怒りたいわけじゃないんです。
本当は、そんなことで人を嫌いになりたくない。
なのに体が先に反応する。
「やめて」と言いたくなる。
耳をふさぎたくなる。
その場から離れたくなる。
でも言えば、必ずこう返される。
「細かい」
「面倒くさい」
「空気を悪くするな」
だから私は、ずっと黙っていました。
昼休みはなるべく席を外す。
会議ではキーボード音が大きい人の隣を避ける。
電車では鼻をすする人が近くにいたら、次の駅で車両を変える。
イヤホンはお守りみたいなものでした。
でも職場では、ずっと使うわけにはいきません。
ある日、隣の席の先輩が新しいキーボードに変えました。
音が大きいタイプでした。
カタカタ、ではなく、
カチン、カチン、と響くような音。
朝9時から夕方まで、ずっとその音が耳に刺さる。
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引用元:https://twitter.com/nazologyinfo/status/2046779019740274828?s=46,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]