夜十一時。
最後の哺乳瓶を洗い終えたとき、キッチンの台に置いてあったスマホが小さく震えた。
メッセージ通知ではなかった。
でも、胸の奥がすっと空くような、そんな震えだった。
微信を開く。
家族グループが、消えていた。
正確に言えば——
私が、そこから消されていた。
一瞬、頭が追いつかなかった。
何度も一覧を更新して、アプリを閉じて開き直して、それでも見つからない。
椅子に座り込んだまま、まだ濡れた手を見つめた。
そのとき、私の頭に浮かんだのはただ一つ。
私は、何も悪いことをしていない。
ことの始まりは、午後だった。
私は「みてね」に一本の動画をアップした。
動画の中で、娘は泣いていた。
私が名前を呼ぶと、泣きながらも、よたよたとこちらに歩いてくる。
激しく泣いているわけじゃない。
顔はくしゃっとしているけれど、小さな足で、一生懸命に前へ進んでくる。
私はその瞬間を残したかった。
泣いているからじゃない。
——私の声に、ちゃんと応えてくれたから。
投稿したとき、正直少し誇らしかった。
しばらくして、義実家のグループLINEに通知が来た。
義母の一言。
「泣いてて、かわいそうね。」
それだけだった。
スタンプもなく、補足もない、短い一文。
私はその文字を見つめながら、胸の奥がじわじわ沈んでいくのを感じた。
産後で眠れず、昼間は一人で育児。
心は常に張りつめていた。
その一言が、ただの感想には思えなかった。
「そんな動画を撮るな」
「そんな姿を見せるな」
「泣かせているのは、あなたでしょ」
そんな意味が、勝手に浮かんでしまった。
迷った末、私は返信した。
「赤ちゃんは泣くものなので。」
送信した瞬間、後悔した。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください