私はただ、駐車場から車を出すために料金を払おうとしていただけだった。
でも、その瞬間、思いもよらぬトラブルが発生した。
駐車場の支払い機は1000円札しか受け付けていないのに、私が持っているのは5000円札だけだった。
すでに後ろには車が2台並んでいて、私は焦るばかり。
「どうしよう、このままだと後ろの車に迷惑をかけちゃう……」と、心の中でグルグルと不安が膨らんでいった。
何度もお札を機械に入れてみたけれど、受け付けてくれず、私は完全にパニック状態に。
後ろの車がクラクションを鳴らし、私はますます焦るばかりだった。
その時、突然、私の車の後ろに停まっていた赤いミニクーパーから青年が降りてきた。
彼は私をじっと見て、静かに近づいてきた。そして、優しい笑顔で言った。
「どうしましたか?」
私はすぐに説明し、5000円札しか持っていないことを伝えた。
「1000円札しか使えなくて、本当にすみません、どうしようもなくて…」
彼は黙って私を見つめた後、驚くべきことに、すぐに1000円札を手に取り、支払い機に入れた。
私の心臓がドキッとした。
「本当にありがとうございます!」と、感謝の気持ちでいっぱいになりながらも、私は5000円を渡そうとした。
「大丈夫ですよ、次回また赤いミニクーパーを見つけたら、その時にお願いします。」
彼は笑いながら、軽く手を振り、すぐに車に戻った。
まるで何事もなかったかのように。
その瞬間、私は完全に言葉を失った。
見知らぬ人が、ただの見知らぬ車の女に、こんなにも優しさを与えてくれるなんて。
その青年は何も求めず、ただ私を助けてくれた。
本当にありがたかった。
でも同時に、私は自分の無力さを感じた。
どうして私はあんなに焦って、周りの車に迷惑をかけてしまうような行動を取ったのか。彼のように落ち着いて、冷静に行動できる人になりたいと思った。
そして、その青年が戻る時、彼が言った言葉が頭から離れなかった。
「次回また赤いミニクーパーを見つけたら、その時にお願いします。」
あんな無償の親切が、今後の人生でどれほど大切な意味を持つか、私はその時初めて理解した。
彼が私にくれたのは、ただの1000円札だけではなく、人間としての温かさ、思いやり、そして無償の善意だった。
私はその善意を、いつか誰かに返せるような人間でありたいと、心から思った。
振り返ると、どんな小さなことでも、私たちは周りの人々に支えられて生きている。
それは時には見知らぬ人からの手助けであったり、日常的な善意だったりする。
その青年のように、何気ない優しさを無条件で人に差し伸べられる人間でありたい。
そして、私もこの経験をもとに、今後は自分ができることをしっかりとやり、他の人に少しでも優しさを伝えられるようにしていこうと思った。
どんな小さなことでも、誰かの心に温かさを届けることができるなら、それこそが本当に素晴らしいことだと感じるからだ。
この世界には、まだまだ美しいものがたくさんある。
その青年がくれた善意を私は決して忘れないし、彼に感謝の気持ちを届けるためにも、私もその善意を他の誰かに送っていきたい。