「満室なので変更できません」
その一言を聞いた瞬間、私は目の前のベッドを見て固まった。
友達と2人で旅行に来て、やっとホテルに到着。
チェックインを済ませて、スーツケースを引きながら部屋に入った。
ドアを開けた瞬間、違和感。
ベッドが1つ。
しかもセミダブル。
私は数秒、何も言えなかった。
後ろから入ってきた友達も、部屋の中を見て止まった。
「……え?これ、1つしかなくない?」
「うん。1つだね」
「ツイン取ったんじゃなかったの?」
私はすぐスマホを開いて、予約画面を確認した。
そこには、はっきり書いてあった。
ツインルーム。
大人2名。
間違いない。
私たちは、友達同士で泊まるためにツインを予約した。
それなのに案内されたのは、どう見ても1人用に近いセミダブルの部屋。
いや、無理でしょ。
私はすぐフロントに電話した。
「すみません。予約はツインなんですが、部屋にベッドが1つしかありません」
電話の向こうで、少し間があった。
そして返ってきたのは、
「申し訳ございません。本日は満室でして、変更ができません」
だった。
私は一瞬、耳を疑った。
「いや、満室かどうかではなく、予約と違う部屋なんですが」
すると相手は、また同じように言った。
「本日は満室でして……」
その言い方で分かった。
これは、こっちが諦めるのを待っている。
“もう部屋に入ったし、夜だし、面倒だから我慢するでしょ”
そう思われている感じがした。
でも、こっちはちゃんとツインで予約している。
勝手に部屋を変えられて、しかも説明もなし。
それで「満室なので無理です」は、さすがに通らない。
私は怒鳴らなかった。
怒鳴ると、こっちがただのクレーマーみたいにされるから。
だから、ゆっくり聞いた。
「確認なんですが、大人2人でこのセミダブル1台の部屋に泊まるのが、ホテルとして適切な案内だとお考えですか?」
電話の向こうが、一瞬静かになった。
さっきまで機械みたいに繰り返していた声が止まった。
私は続けた。
「こちらはツインルームとして予約しています。予約内容と違う部屋を案内された以上、変更できないなら、差額の返金や補償の話になりますよね?」
また沈黙。
友達が横で小さくうなずいていた。
私はさらに言った。
「このまま泊まってください、というのが正式な対応なら、その内容を記録させてください」
すると、急に声のトーンが変わった。
「少々お待ちください」
さっきまであんなに即答で“満室”と言っていたのに、急に保留。
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