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「馬が喜ぶと思って置いただけです」囲いの横に丸ごとのキャベツとにんじん。私が“最悪死ぬこともある”と伝えた瞬間、相手の顔色が変わった…
2026/07/08

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朝、いつものように馬房の周りを見回っていた時でした。

囲いの近くに、見慣れないものが置かれていました。

排水溝の横に、丸ごとのキャベツ。

そのそばに、袋に入ったにんじんがいくつも。

最初は、誰かが落としていったのかと思いました。

でも、近づいてすぐに分かりました。

これは落とし物ではありません。

馬が首を伸ばせば届く位置に、わざわざ置かれていたのです。

私は一気に血の気が引きました。

にんじんならまだしも、キャベツは本当に危ない。

馬が食べるとお腹を壊すだけでは済まないことがあります。

疝痛を起こせば、最悪の場合、命に関わることもある。

置いた人は、きっと悪気なんてなかったのでしょう。

「馬さんに食べてほしい」

「野菜なら健康にいいだろう」

そんな軽い気持ちだったのかもしれません。

でも、その“善意”が一番怖いのです。

馬の体のことを知らない人が、勝手な判断で食べ物を置く。

食べた後に苦しむのは馬です。

夜中に異変に気づいて走るのは私たちです。

獣医さんを呼んで、祈るような気持ちで見守るのも私たちです。

置いた本人は、その場にいません。

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私はすぐにスマホを取り出しました。

キャベツとにんじんの位置が分かるように写真を撮りました。

時間も記録しました。

どの場所に置かれていたのかもメモしました。

それから、すぐに責任者へ連絡しました。

「囲いの横に野菜が置かれています。馬が届く位置です」

責任者はすぐに来てくれました。

二人で周囲を確認すると、同じように何かを置かれた形跡がいくつかありました。

正直、ぞっとしました。

今回たまたま私が早く見つけただけです。

もし巡回が遅れていたら。

もし馬が先に気づいていたら。

そう考えるだけで、背中が冷たくなりました。

私たちはその場の野菜をすぐに撤去しました。

そして、囲いの近くをもう一度すべて確認しました。

それだけでは終わらせませんでした。

その日のうちに、入口と囲いの近くに大きな告知を貼りました。

「無断で食べ物を与えないでください」

「善意の投げ入れでも、馬の命に関わる場合があります」

「特にキャベツは絶対に置かないでください」

強い書き方だと思う人もいるかもしれません。

でも、やさしく書いて伝わらないなら意味がありません。

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これはマナーの話ではありません。

命の話です。

翌朝、私はいつもより少し早く巡回に出ました。

嫌な予感がしていたからです。

すると、囲いの向こうに昨日と同じような袋を持った人が立っていました。

その人は周りを見ながら、また野菜を置こうとしていました。

私はすぐに声をかけました。

「すみません、それを置かないでください」

相手は驚いた顔をしました。

そして、少し不満そうに言いました。

「え?馬にあげようと思っただけですけど」

やっぱり、そうでした。

悪意ではない。

けれど、分かっていない。

私は怒鳴りませんでした。

でも、はっきり言いました。

「そのキャベツ、馬が食べたら疝痛を起こすことがあります。最悪、死ぬこともあります」

その瞬間、相手の顔色が変わりました。

「え……キャベツってダメなんですか?」

「ダメな場合があります。少なくとも、知らない人が勝手に置いていいものではありません」

責任者も来て、丁寧に説明してくれました。

馬は何でも食べていいわけではないこと。

体調や量によって危険になること。

勝手な投げ入れが、どれだけ現場を困らせるか。

相手は最初こそ戸惑っていましたが、最後には小さな声で謝りました。

「すみません。喜ぶと思っていました」

私はその言葉を聞いて、少しだけ力が抜けました。

喜ばせたい気持ちは、たぶん本物だったのでしょう。

でも、本当に好きなら、まず知ってほしい。

可愛いから食べ物をあげる。

それは愛情ではありません。

相手の体を守ることまで考えて、初めて愛情です。

その日から、囲いのそばに野菜が置かれることはなくなりました。

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後日、告知を見た人からも声をかけられました。

「知らなかったです。書いてくれてよかったです」

その一言で、貼ってよかったと思いました。

たった一つのキャベツ。

たった数本のにんじん。

でも、それが命を奪うことだってあります。

善意なら何をしてもいいわけではありません。

知らないままの親切ほど、危ないものはない。

馬を守るために、私はこれからも遠慮せず言います。

「勝手に食べ物を置かないでください」

それは冷たい言葉ではありません。

命を守るための、いちばん大事な言葉です。

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