結婚式まであと1か月――安心のために頼んだ婚前身辺調査の報告書を手に取った瞬間、私は息を呑んだ。
「総合評価:B(要確認)」
その一行だけで、心が一気に沈んだ。犯罪歴も反社会的関係もなく、債務もない。表面的には、すべて問題なさそうに見える。でも、次のページをめくった瞬間、私は凍りついた。
月々の支出――26万5080円。家賃や光熱費以外に、娯楽費、交際費、サブスク課金、そして高額ギフトの購入履歴が並んでいる。Netflix、Amazon Prime、Spotify、YouTube Premium……それだけでも合計3万以上。さらにwako〇 VIP会員費が月1万2800円。そしてギフト購入の記録は5件、総額7万円以上。
「……結婚前に、こんなに自由に使ってたの?」
私は胸の奥がざわつくのを感じながら、深呼吸した。慌てず、報告書を手元に置き、彼に確認することにした。
「ねぇ、この支出、全部説明できる?」
彼は一瞬目をそらし、軽く笑って答えた。
「結婚前の最後の息抜きだよ」
その軽さに、私の血の気が引く。いや、これはただの“息抜き”で片付けられる金額じゃない。毎月1万以上のAPP課金や、ギフト購入が複数回もある。これを結婚後に知らされて、私の生活がどうなるか、想像するだけで恐怖だった。
「じゃあ、すべて明細を見せて。カード明細、サブスク利用履歴、ギフトの購入履歴――全部」
私は毅然とした声で告げた。結婚式は延期だと暗に伝えている。これ以上、曖昧にして済ませるわけにはいかない。
彼は一瞬黙り込んだ。報告書の数字が、彼の言い訳を無力化していた。スマホにサブスク情報、カード明細、購入履歴を提示すると、もはや言葉が出ない。
私は心の中で静かに勝利を確信した。「婚前調査は信頼を疑うためじゃない。自分の未来を守る最後の防波堤なんだ」
その日以降、婚礼の準備は一時停止。必要な確認をすべて終えて、私は初めて安心できた。結婚は二人の生活の始まりであり、現実を見極める目を持つことが、幸せを守る最初の一歩なのだ。