ミャンマー北部の空に、一日中ずっと花火が上がっていた。
「日本人の女から5000万円搾り取ったらしいぞ!」
園区中がその話で持ちきりだった。
幹部たちは大騒ぎ。
ボスは上機嫌。
“伝説級の成果”だって、酒まで開けて祝っていた。
でも——
その5000万円は、全部ボス本人の家計口座から流れていた。
しかも誰も気づいていなかった。
私は送金元情報を偽装し、一般日本人被害者のように見せかけたからだ。
金はすべて息子の副カード経由で引き出され、
そのカードの名義人は、ボスが溺愛する一人息子だった。
私は監禁部屋で一人静かに笑っていた。
だって。
日本人を騙せと殴りつけてきた悪党たちは、
今、知らぬ間に自分たちのボスを全力で騙し、
盛大に祝い上げているのだから。
——三ヶ月前。
私は「高収入の海外事務職」という求人に騙されて、ミャンマーへ連れてこられた。
空港に着いた時点で、何かがおかしいと気づいていた。
パスポートは回収。
スマホも没収。
車に乗せられ、窓を黒く塗られたまま何時間も移動した。
到着した場所は、“会社”なんかじゃなかった。
鉄格子。
監視カメラ。
電流フェンス。
そして、日本語だらけの詐欺マニュアル。
そこはいわゆる“園区”だった。
最初の夜、私は逃げようとして殴られた。
机に顔を押しつけられながら、男に言われた。
「ここで働け」
「日本人を騙せ」
「数字出せない女は売る」
周囲には、同じように連れてこられた女の子たちがいた。
泣いてる子。
無表情な子。
もう諦めてる子。
その中で、私は気づいた。
ここでは“反抗する人間”から先に壊される。
だから私は従うフリをした。
笑った。
媚びた。
日本人を騙す演技も覚えた。
でも、本当に観察していたのは園区の人間たちだった。
誰が偉いか。
誰が金を持ってるか。
誰が馬鹿か。
そして、一番チョロかったのが——
ボスの息子だった。
二十代後半。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]