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ドアパン対策を笑った私、5分後に謝りたくなった
2026/05/06

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GWの大型ショッピングモールは、毎年地獄だ。

駐車場は満車。通路は渋滞。子どもは走り回り、親はスマホを見ながらカートを押している。

私はその日、買い物を終えて駐車場へ戻る途中、妙な車を見つけた。

黒の高級セダン。

……いや。

正確には、そのドアに付いている“異様な物”に目が止まった。

助手席と後部座席の両側に、巨大なスポンジみたいな防護パッドが貼り付けられていたのだ。

しかもベルト固定。

完全武装。

思わず笑いそうになった。

「いや、神経質すぎるだろ……」

すると近くにいた若い男も苦笑していた。

「ここまでやる?って感じっすよね」

私は軽く同意した。

だが、その5分後だった。

隣のスペースに、白いミニバンが勢いよく入ってきた。

中には、小学生くらいの兄妹。

運転席から降りてきた母親は、イヤホンを付けたままスマホを見ている。

嫌な予感がした。

次の瞬間。

「バンッ!!」

乾いた音が駐車場に響いた。

兄の方が、勢いよくドアを開け、黒いセダンに直撃したのだ。

私は思わず顔をしかめた。

だが母親は、チラッと見ただけ。

そして笑いながらこう言った。

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「も〜、気をつけなよ〜」

終わり。

確認もしない。謝りもしない。

しかも子どもは、また同じ勢いでドアを開けようとしている。

私は思わず声をかけた。

「今、当たりましたよね?」

すると母親は、露骨に嫌そうな顔をした。

「はぁ?」

その態度に驚いた。

普通、まず謝るだろ。

だが彼女はため息をつきながら言った。

「子どもなんで」

いや意味が分からない。

「でも傷ついたかもしれませんよ?」

すると今度は、鼻で笑った。

「こんな駐車場で高い車乗ってる方が悪くないですか?」

……出た。

私は一瞬、言葉を失った。

さらに彼女は続けた。

「だからあんな変なの付けてるんでしょ?神経質すぎ」

周囲の空気がピリついた。

近くにいた人たちも、さすがに顔をしかめている。

だがその時。

後ろから低い声がした。

「その“変なの”、役に立って良かったです」

振り向くと、黒いセダンの持ち主だった。

40代くらいの男性。

怒鳴っていない。

むしろ妙に冷静だった。

母親は少し怯んだが、すぐ強気に戻った。

「でも傷ついてないですよね?」

男性は静かに頷いた。

「ええ。今日は、ね」

そして、防護パッドをゆっくり外した。

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その裏側には、白い塗料がベッタリ付いていた。

ミニバンの色だった。

母親の顔色が変わる。

男性はスマホを取り出した。

「あと、全部録画されてます」

見ると、車内のドラレコ画面には、子どもが勢いよくドアをぶつける瞬間が、ハッキリ映っていた。

さらに、母親の発言まで録音されている。

『高い車乗ってる方が悪い』

その声が、駐車場に響いた。

周囲が一気に静まり返る。

さっきまで強気だった母親の顔から、血の気が引いていく。

「え……いや、その……」

男性は淡々としていた。

「これ、6回目です」

母親が固まる。

「前は逃げられました。証拠もなかった。だから対策したんです」

防護パッドを見ながら、男性は苦笑した。

「みんな笑うんですよ。“やりすぎ”って」

私はさっき、まさにそう思っていた。

でも違った。

この人は、好きでこんな事してるんじゃない。

“ここまでしないと守れない”経験を、何度もしてきたんだ。

男性は最後に、静かに言った。

「子どもがぶつけるのは仕方ないです。でも、謝らないのは大人の問題ですよね」

その瞬間。

母親は完全に黙った。

さっきまでの威圧感は消え、小さく頭を下げた。

「……すみませんでした」

周囲の空気が変わる。

誰も声を出さない。

でも全員、同じことを思っていた。

“悪いのは子どもじゃない”

帰り際。

私は黒いセダンの横を通りながら、もう一度あの防護パッドを見た。

少し前まで、笑いそうになっていた物。

でも今は、違って見えた。

あれは神経質の象徴じゃない。

“何度も理不尽を我慢してきた人間の防具”だった。

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