昨日の朝、車の後ろを見た瞬間、思わず息をのんだ。黒いバンパーに深い傷が走っている。あれ、昨日までは確かに無傷だったはず。ああ、やられた……。めんどくさい、心の中でそう呟きながら、私はそっと車を降りた。
周囲はまだ静かだ。朝の光が路面に反射して、傷を一層際立たせている。心臓が少し早く打つ。怒りとため息が入り混じった複雑な感情だ。どうしてこんなことになるのか。誰が、何のために……。そう思う間もなく、助手席に置いていた小さなメモが目に入った。白い紙に鉛筆で書かれた文字。「大変申し訳御座いません。車(後部)をぶつけてしまいました。修理代の件でご連絡お願いします。」
文字がゆらゆら揺れているように見えた。謝罪の言葉が書かれているのに、なんだか笑えてしまった。そう、面倒くさいけど、直接連絡を残してくれただけマシだ。逃げるような人間もいる中で、これは一応の誠意なのだろう。
私は深呼吸した。まずは落ち着かなくては。バンパーの傷を確認しながら、メモの送り主を推測する。朝の駐車場で、私が止めた位置とぶつけることができる範囲。
なるほど、隣の車か……。運転席の角度からして、この人しかいないだろう。ああ、面倒くさい、でも推理は面白い。
傷の横に指を滑らせる。塗装が削れていて、下地が見える。修理するなら数万はかかるだろうか。頭の中で金額を計算する。ああ、めんどくさい、ほんとにめんどくさい。けれど、このまま怒りを抱えたまま一日を過ごすわけにもいかない。
そう思った瞬間、再びメモを見つめる。細かく書かれた文字、震える手で書いたのだろう。謝罪の後に「修理代の件でご連絡お願いします」とある。直接的で、実にシンプルだ。怒りもあるけれど、ちょっとした安心感も芽生えた。やられたけど、相手は逃げていない。
私はスマホを取り出す。メモの内容を写真に収め、保険会社に連絡する準備をする。面倒くさいけど、こうして手続きを進めれば、最終的には解決できる。そう思いながら、ふと笑いがこみ上げてきた。怒るべきところで笑う自分に、少し呆れる。
バンパーの傷を最後にもう一度見て、心の中でつぶやく。「次からは駐車の時、もっと慎重にしよう」。でも、めんどくさい現実は、こうしてやってくるのだ。
誰かの不注意、ちょっとした運転ミス。避けようと思っても避けられない。それが人生というものだろう。
修理代や面倒な手続きが待っている。でも、逃げずに対応すれば、いずれ片がつく。深呼吸して、私はスマホを握る手に力を込めた。めんどくさいけど、これも経験だ。教訓を胸に、今日も一歩前に進む。
結局、やられたことは変わらない。でも、直接謝罪してくれた相手には、ちょっとだけ感謝しよう。
めんどくさいけど、社会はこうして回っている。そう自分に言い聞かせて、私は車の横で一度、頭を下げた。
めんどくさい。ほんとにめんどくさい。でも、これが現実。逃げずに、対応していくしかない。ああ、次はもっと安全に駐車しよう、と深く心に誓った。