ポストを開けた瞬間、見慣れない封筒が入っていた。
差出人はNHK。
「ご契約住所の変更のお知らせ」
最初は、ただの住所変更通知だと思った。
引っ越し後の案内かな。
そう思って何気なく開いた私は、次の一文で完全に固まった。
「お客様の住民票(除票)の写しを取得して……」
え?
今、なんて?
私はその部分を何度も読み返した。
住民票。
除票。
写しを取得。
つまり、私が自分で住所変更を届け出たわけでもないのに、NHK側が私の住民票関係の情報を確認して、契約住所を変更したということらしい。
正直、背中が少し冷たくなった。
私はNHKに新住所を連絡していない。
住所変更の手続きもしていない。
それなのに、なぜ向こうは私の転居先を把握しているのか。
しかも、通知には「公共機関への調査等により住所の変更を確認できた場合」みたいな説明が書かれている。
いやいや。
公共機関への調査って何?
本人の同意は?
誰が、いつ、どこに、何の目的で申請したの?
ただの通知書のはずなのに、読めば読むほど疑問しか出てこなかった。
もちろん、住所変更そのものが悪いと言いたいわけではない。
契約管理上、必要な手続きがあるのかもしれない。
法律上、認められた範囲があるのかもしれない。
でも、こちらは何も知らされていない。
自分の個人情報が、いつの間にか取得され、確認され、手続きに使われていた。
その事実だけが、ものすごく気持ち悪かった。
私はその場で通知書を写真に撮った。
該当箇所に赤線を引くようにして、文字がはっきり見えるように保存した。
そして、すぐにNHKへ電話した。
最初に出た担当者は、いつもの案内のような声で言った。
「住所変更のお知らせについてですね」
私はなるべく落ち着いて聞いた。
「この通知に、住民票の除票の写しを取得したとあります。これは本人の同意なく取得されたという理解でいいんですか?」
電話口が少し静かになった。
担当者は少し間を置いて言った。
「契約者様の住所確認のため、必要な手続きとして行っております」
出た。
“必要な手続き”。
私はもう一度聞いた。
「必要なのは分かりました。では、その法的根拠を教えてください。
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