夫の財布から、23時のコンビニのレシートが出てきた。
最初はただの買い物だと思った。
でも、そこに並んでいた商品名を見た瞬間、私の手が止まった。
テリア メンソール。
これは夫がいつも吸っているもの。
でも、その下にあったのは「シャインパール」。
夫が一度も吸っているところを見たことがないタバコだった。
さらに、コーヒーブラック。
これは分かる。夫は甘い飲み物が嫌いで、コーヒーはいつもブラックしか飲まない。
なのに、もう一つ。
「ホワイトモカ」。
甘いものが嫌いな夫が、夜の23時に、甘いホワイトモカを買う?
私はレシートを持ったまま、しばらく動けなかった。
その夜、夫は確かにこう言っていた。
「今日は会社でトラブルがあってさ。
帰るの遅くなる。飯も食えないかも」
私はそれを信じていた。
「大変だね、無理しないでね」なんて送って、帰ってきた夫に温かい味噌汁まで出した。
なのに、夫は23時にコンビニで、明らかに“誰かの分”まで買っていた。
私はその場で問い詰めなかった。
怒りで手は震えていたけれど、ここで感情的になったら、きっと夫は適当にごまかす。
だから私は、レシートを写真に撮って、元の場所に戻した。
翌朝。
夫は何も知らない顔で朝食を食べていた。
私はいつも通りにお茶を出して、何気ない声で聞いた。
「昨日、かなり遅かったよね。会社、何時までいたの?」
夫は味噌汁をすすりながら、即答した。
「ほぼ12時前まで。もう本当に疲れた」
その一言で、私の中の最後の迷いが消えた。
私は静かに立ち上がり、昨日のレシートをテーブルに置いた。
「じゃあ、これは何?」
夫の箸が止まった。
私はレシートの時間を指さした。
「23時。コンビニ。あなたがいつも吸ってるタバコと、ブラックコーヒー。
そこまでは分かる」
夫は黙ったまま、目だけが泳いでいた。
私は続けた。
「でも、このシャインパールは誰の? ホワイトモカは誰の? あなた、甘いもの嫌いだよね」
夫は一瞬だけ顔をこわばらせたあと、すぐに不機嫌そうな表情を作った。
「は? 会社の同僚に頼まれただけだけど」
出た。
予想通りの言い訳。
私は笑わなかった。
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