夜、仕事帰りに駐車場を通りかかったとき、思わず足が止まった。
一台の車が、まるで雪でも積もったみたいに真っ白になっていたからだ。
近づいてみて、理由が分かった。
全部、紙だった。
フロントガラス、ボンネット、ドア、ミラー、リア——
ありとあらゆる場所に、同じ文面の紙が貼られている。
「無断駐車はご遠慮ください」
「長時間の駐車はお控えください」
「次回は対応します」
その“次回”が、これだったんだろう。
最初は正直、笑いそうになった。
「なんだこれ…やりすぎだろ」って。
でも、すぐに気づいた。
この車、見覚えがあった。
——ずっと、ここに停まってたやつだ。
昼でも、夜でも、雨の日でも。
何日も、いや何週間も、同じ場所に。
ここは店の駐車場で、本来は客用。
でもこの車は、明らかに客じゃない。
エンジンもかからない。
人も出てこない。
ただ、そこに“置いてある”だけ。
店員が困ってるのも何度か見た。
張り紙をワイパーに挟んで、注意して。
それでも翌日には、何事もなかったかのようにそのまま。
「またあの車か…」
そんな空気が、完全に出来上がってた。
一度、店員が誰かに電話してるのも見たことがある。
たぶん管理会社か、警察か。
でも、結局どうにもできない。
無断駐車って、実は厄介だ。
勝手に動かせば問題になる。
傷つければアウト。
だからこそ、やったもん勝ちみたいになる。
——でも、この日は違った。
「もういいわ」
誰かがそう思ったんだろう。
その結果が、この“200枚の警告”だった。
近くにいた人も、みんな立ち止まって見ていた。
「これ全部貼ったの?」
「やば…でもちょっと分かるわ」
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