家に帰ると、テーブルの上に一通の封筒が置かれていた。
市役所から届いた、大学生の息子宛ての納税通知書だった。
何気なく開いた瞬間、私は思わず声が出た。
「え、なんで?」
そこには、市民税・県民税・森林環境税として、二万数千円を納めるように書かれていた。
息子はまだ大学生だ。
授業のない日に少しアルバイトをしているだけで、年間の収入はせいぜい六十万円ほど。
なのに通知書の計算を見ると、まるで百二十万円以上稼いだ人のような扱いになっていた。
私は息子を呼んだ。
「あなた、去年そんなに稼いだの?」
息子は通知書を見た瞬間、顔色を変えた。
「いや、絶対にないよ。」
「月に五万円前後だし、試験前はほとんど入ってない。」
その声は、言い訳ではなかった。
本当に何も知らない顔だった。
私はすぐに通帳の入金履歴、給与明細、シフト表を確認した。
何度見ても、金額は合わない。
どう考えても、市役所の通知に出ている収入とは違っていた。
翌朝、私は市役所に電話をした。
事情を説明すると、担当者は淡々と言った。
「こちらには勤務先から給与支払報告書が届いておりますので、その金額で計算されています。
」
「でも本人の実際の収入と違います。」
「勤務先からの報告に基づいていますので、まずは勤務先に確認してください。」
その言い方に、私は少し腹が立った。
まるで、通知が出た以上は黙って払えと言われているようだった。
でも、ここで引いたら終わりだ。
私は息子に言った。
「大丈夫、これはちゃんと調べる。」
その日の夕方、私は息子が働いている店に行った。
店長に通知書と給与明細を見せて説明すると、店長は最初、面倒くさそうに笑った。
「ああ、そういうのは役所の計算じゃないですか?」
私は静かに言った。
「役所は、そちらから出した報告を元にしていると言っています。」
店長の表情が一瞬だけ固まった。
それでも彼はすぐに言った。
「まあ、二万円くらいなら先に払っておけばいいんじゃないですか?」
その一言で、私の中の何かが切れた。
「では、あなたが払ってくれますか?」
店長は黙った。
「本人が稼いでいないお金に対して、なぜ本人が税金を払うんですか?」
「たった二万円ではありません。」
「学生にとっても、親にとっても、間違った請求をそのまま払う理由はありません。
」
店長はようやく奥に引っ込み、書類を確認し始めた。
しばらくして戻ってきた彼の顔は、明らかにさっきと違っていた。
「少し確認が必要です。」
私はその場で言った。
「今ここで確認してください。」
すると、信じられないことが分かった。
店が市に提出した給与支払報告書で、別のアルバイトの収入が、うちの息子の名前に混ざっていたのだ。
似た時期に入った学生アルバイトのデータを処理する時に、担当者が間違えたらしい。
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