「観覧イベントで席に座っただけなのに、立ち上がったら白いズボンに血がついていた。」
最初は意味が分からなかった。
でも隣の友人も同じだった。
嫌な予感がして椅子を見たら——
白い座面に、はっきり血がついていた。
……は?
会場は人でぎっしりで、誰も気づいていない。
すぐ主催者に伝えた。
でも返ってきたのは、
「誰がやったか分からないので対応できません」
という一言だった。
その瞬間、正直おかしいと思った。
この状態で放置?
でも私は、強く言わなかった。
その代わり——
少しだけ間を置いて、こう言った。
「このままだと、感染の可能性もありますよね?」
その一言で、
相手の表情がわずかに変わった。
でも、すぐに言い返してきた。
「いや、それは分からないので…」
どこか曖昧な言い方だった。
さっきと同じように、
責任をぼかすような口調。
私は一歩も引かなかった。
「分からない、じゃなくて」
少しだけ言葉を区切って、
続けた。
「この状態で続けるかどうかの判断、今できますよね?」
その瞬間、
近くにいた人たちが、
少しずつこちらを見るようになった。
最初はほんの数人だった。
でも、
「血って言った?」
「え、どこ?」
ざわざわと声が広がる。
さっきまで誰も気づいていなかったのに、
一気に空気が変わっていく。
主催者の表情が、
明らかに固くなった。
「いや、あの…一旦確認しますので…」
さっきまでの
「対応できません」は消えていた。
私は何も言わなかった。
ただその場に立っていた。
数人が椅子を覗き込む。
「うわ、ほんとだ…」
「これ座ってたの?」
「大丈夫?」
声が増える。
視線も増える。
主催者は一度奥に下がって、
誰かと話し始めた。
明らかに焦っていた。
数分後——
別のスタッフが出てきた。
さっきよりも年上で、
少し落ち着いた雰囲気の人だった。
「申し訳ありません、状況確認しました」
その一言で、
流れが変わった。
「一部の座席に汚れが確認されましたので、該当エリアを使用停止にします」
はっきりした対応だった。
さらに、
「該当された方には個別に対応させていただきます」
と続けた。
さっきとは、
完全に違う対応だった。
私はそのまま話を聞いていた。
最初に対応したスタッフは、
少し後ろで立っていた。
もう何も言わなかった。
その後、
席の周りはすぐに囲われて、
別の席へ案内された。
簡単なクリーニング対応と、
後日連絡の案内もあった。
友人と顔を見合わせた。
正直、
最初にあの一言を聞いたときは、
どうなるかと思った。
でも——
あのまま黙っていたら、
たぶん何も変わらなかったと思う。
そして思った。
「誰がやったか分からない」ことと、
「放置していいか」は、
まったく別の話なんだと。
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