《またあの車だ。今度こそ私は黙らなかった》
駐車場に入った瞬間、私は思わず足を止めた。
また、あの車だった。
前にも見たことがある。
その時は斜めに突っ込むように停めていて、隣の車の持ち主が運転席から乗れず、わざわざ助手席から体をねじ込んでいた。
「ひどい停め方だな」と思ったけれど、その時は急いでいたし、直接の被害者でもなかったから、何も言わずに通り過ぎた。
でも、今回は違った。
車止めまではちゃんと下がっている。
一見すると、枠の中に収まっているようにも見える。
けれど、横が最悪だった。
隣の車に寄りすぎていて、運転席側のドアがほとんど開かない。
あと数センチでも余裕を作れたはずなのに、まるで「自分さえ停められればいい」と言っているような止め方だった。
私はその場でため息をついた。
「こいつ、また居た……」
本当にそう思った。
しかも、たまたま下手だったという感じではない。
前回も同じ。
今回も同じ。
車をきれいに停める努力をしていないのではなく、隣の人のことを最初から考えていない停め方だった。
近くにいた人が、私の視線に気づいて苦笑いした。
「あの車、前もこんな感じでしたよ」
やっぱり。
私だけが気にしすぎているわけじゃなかった。
すると別の人が小声で言った。
「でも、関わらないほうがいいですよ。面倒になりますから」
その気持ちも分かる。
車のトラブルは怖い。
変な人だったら嫌だし、逆ギレされたらもっと面倒だ。
でも、その言葉を聞いた瞬間、私は逆に腹が立った。
どうして、ちゃんと停めている人が我慢しなきゃいけないのか。
どうして、迷惑をかけている側が何度も平気な顔をして、被害を受ける側だけが「仕方ない」で済ませなきゃいけないのか。
私はその車に近づいた。
もちろん、車には一切触らない。
傷をつける気も、文句を書いた紙を貼る気もない。
そんなことをしたら、こっちが悪者になるだけだ。
私はスマホを出した。
車位線が分かる角度。
隣の車との距離。
ドアが開かないほど寄っている状態。
車止めまで下がっているのに横の配慮がないこと。
それが分かるように、何枚か写真を撮った。
さらに、以前見かけた時に念のため撮っていた写真も確認した。
そこにも、同じ車が同じように迷惑な停め方をしていた。
私はその足で駐車場の管理室へ向かった。
受付にいたスタッフに写真を見せると、最初は少し困った顔をした。
「枠から完全には出ていないので、注意の貼り紙くらいになるかもしれませんね」
出た。
こういう時によくある“やんわり対応”。
私はスマホの画面を横にスライドした。
「これ、今日だけじゃないです」
前回の写真。
別の日の写真。
同じ車。
同じような停め方。
スタッフの表情が少し変わった。
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