ウーバーで「チキンタツタ」を頼んだ。
仕事終わりでヘトヘトだった私は、それだけを楽しみに帰宅した。
でも、箱を開けた瞬間――私は本気で固まった。
「……え?」
バンズを開く。
レタス。ソース。チーズ。
……終わり。
肝心の“タツタ”だけが、綺麗になくなっていた。
最初は、「配達中に崩れたのかな」くらいに思った。
でも、どう見ても違う。
“肉だけ”が存在しない。
誰がどうやったら、こんなミスになるんだ。
私はすぐウーバーのサポートへ連絡した。
すると返ってきたのは、
「配達パートナーへご確認ください」
だった。
いやいやいや。配達員が途中で肉だけ抜くわけある?
意味が分からない。
仕方なく配達員に連絡すると、今度は向こうが焦った声で言った。
「えっ、僕、袋開けてません!」「ちゃんと封されてました!」
完全に板挟み。
店は配達員のせい。配達員は店のせい。
どっちも認めない。
しかもサポートは、テンプレみたいな返答ばかり。
「確認いたします」「お時間いただきます」
……いや、こっちは今食べる飯が無いんだが?
だんだん腹が立ってきた。
こっちはクレーマーになりたいわけじゃない。
ただ、“普通の商品”を頼んだだけだ。
なのに、誰一人まともに対応しない。
イライラしながら、私はもう一度箱を見た。
そして次の瞬間、思わず変な声が出た。
箱の内側に、こう書かれていたからだ。
『予告状 貴方のタツタを頂きに参ります』
……怪盗キッド。
おい待て。
本当に盗まれてるやないか。
一瞬で怒りと笑いが同時に来た。
なんなんだこの状況。
私は写真を撮って再度サポートへ送った。
すると数分後。
さっきまで定型文しか送ってこなかった担当者から、急に長文メッセージが届いた。
「この度は大変申し訳ございません」「店舗側の調理ミスが確認されました」
やっぱり店側だった。
しかも後から聞いた話では、期間限定商品で注文が殺到し、厨房がかなり混乱していたらしい。
……いや、だからって肉抜きバーガーはダメだろ。
さらに驚いたのはその後だった。
店長から直接電話が来たのだ。
最初は明らかに、「またクレームか…」みたいな空気だった。
でも私が、
「いや、怒ってるというか…怪盗キッド完成度高すぎて逆に笑いました」
と言った瞬間。
電話の向こうで、店長が吹き出した。
そしてその後、何度も謝罪された上に、
・返金・商品再送・クーポン対応
まで全部してくれた。
数時間前まで、
「こちらでは分かりかねます」「配達側へ確認してください」
と責任を押し付け合っていたのに、
証拠一枚で、空気が全部変わった。
結局、一番腹が立ったのは、“ミス”そのものじゃない。
最初から、ちゃんと認めれば済む話だったんだ。
でも最近こういうの多い。
誰も責任を取りたがらない。
とりあえず相手に押し付ける。
だからこそ、最後にちゃんと認めて謝罪した時、逆に少し救われた。
……まあ、人生で初めてだけど。
「肉が入ってないバーガー」で、ここまで感情を振り回されるとは思わなかった。