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「お布施120万円、領収書は出せません」母の葬式で始まった“兄の嘘”に震えた
2026/05/19

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母が亡くなった日のことを思い出すたび、今でも胃の奥が重くなる。

病院の白い廊下。
静かになった心電図。
冷たくなっていく母の手。

私は涙も出なかった。

なのに兄は、母の遺体が運ばれる前から、もう金の話を始めていた。

「葬式、ちゃんとしたの出すから」

そう言ってスマホを見ながら、淡々と続けた。

「寺に払う分も含めて、全部で120万円くらい必要になる」

私は思わず聞き返した。

「……120万?」

あまりにも高かった。

でも兄は露骨に顔をしかめた。

「母さんのためだぞ?」

その一言で、私は何も言えなくなった。

母は昔から世間体を気にする人だった。
親戚付き合いも、近所付き合いも大事にしていた。

だから最後くらい、ちゃんとしてあげたい。

そう思ってしまった。

でも。

通夜の準備が始まってから、兄の様子はどこかおかしかった。

「戒名は上のランクにしないとダメだ」

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「供養をケチるのは最低だ」
「寺との付き合い壊したいのか?」

まるで寺の人間みたいだった。

しかも、金の話になるとすぐ怒る。

私は恐る恐る聞いた。

「……領収書とか、ないの?」

すると兄は一瞬だけ黙ってから、面倒くさそうに吐き捨てた。

「お布施に領収書なんか出ないんだよ」

その時は、そういうものなのかなと思った。

でも違和感が残った。

母は生前、いつも言っていたからだ。

「お金だけは曖昧にしちゃダメ」

通夜の日。

親戚が焼香している横で、兄は白い封筒を住職に渡していた。

住職は中身も確認せず、そのまま奥へ持って行く。

その瞬間だった。

受付机の端に、私は“ある物”を見てしまった。

『領収証』

そう印刷された冊子だった。

私は一瞬、呼吸が止まった。

“あるじゃん……”

頭の中がざわついた。

兄は「出ない」と言った。
でも寺には普通に領収証が置いてある。

じゃあ、なぜ?

四十九日の準備が始まる頃には、私は完全に疑っていた。

本当に120万円も必要だったのか?

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私は兄に内緒で、別の寺へ相談した。

母と同じ規模の葬儀。
戒名あり。
法要込み。

全部説明したあと、恐る恐る聞いた。

「普通、どれくらい掛かるものですか?」

電話口の住職は少し考えてから言った。

「高くても50〜60万円くらいでしょうか」

私は鳥肌が立った。

半額以下だった。

じゃあ残りの金はどこへ消えた?

数日後。

私は一人で寺へ向かった。

心臓がうるさいくらい鳴っていた。

受付には若い副住職がいた。

私は覚悟を決めて聞いた。

「あの……先日のお布施なんですが、領収書って出せますか?」

すると副住職は、驚くほど普通の顔で答えた。

「はい、お出しできますよ」

その瞬間。

背筋が凍った。

私は震える声で続けた。

「ちなみに……母の葬儀で、お寺にお支払いした金額って……」

副住職は帳簿を確認しながら言った。

「60万円ですね」

頭の中で、兄の言葉が弾けた。

“120万円”

半分だった。

私はその場で立っていられなくなった。

寺を出たあと、吐きそうになりながら兄の部屋を調べた。

すると出てきた。

消費者金融の督促状。
カードローン。
赤字だらけの通帳。

借金だった。

兄は母の葬式を利用したんだ。

寺と話を合わせ、金額を水増しして。

差額を、自分の借金返済に回していた。

親族会議の日。

私は全員の前に、寺の正式な記録を並べた。

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実際の支払額。
兄が請求した金額。
借金の督促状。

最初、兄は怒鳴った。

「違う!誤解だ!」

でも叔父が静かに聞いた。

「じゃあ、残り60万はどこ行った?」

兄は黙った。

誰も声を出さなかった。

母の遺影だけが、静かにこちらを見ていた。

しばらくして兄は崩れるように座り込み、顔を覆った。

「俺だって苦しかったんだよ……」

泣きながらそう言った。

でも。

私は許せなかった。

どれだけ追い詰められていても。
どれだけ苦しくても。

母の死を利用していい理由にはならない。

私は母の遺影を見ながら、静かに言った。

「“領収書なんか出ない”って言った時点で、
 お前、自分が何してるか分かってたよね」

兄は最後まで、顔を上げられなかった。

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