朝、郵便受けを開けた瞬間、私はその場で固まった。
ガス会社からの検針票。
いつものように何気なく開いたのに、そこに書かれていた金額を見た瞬間、頭が真っ白になった。
「5,724,500円」
一瞬、目がおかしくなったのかと思った。
五千円ではない。
五万円でもない。
五百七十二万四千五百円。
私は思わず声に出した。
「……うち、ガスで何を燃やしたの?」
震える手で使用量を見ると、さらに意味が分からなかった。
前回使用量、1.5㎥。
今回使用量、9998.5㎥。
いや、待って。
うちは普通の家庭だ。
工場でもない。
温泉旅館でもない。
巨大な厨房を回しているわけでもない。
それなのに、いきなり一万立方メートル近い使用量?
あり得ない。
私はすぐにガス会社へ電話した。
怒りより先に、まず確認しなければと思った。
しばらく待たされたあと、ようやく客服につながった。
「請求書の金額がおかしいんです。5,724,500円になっています」
すると電話口の担当者は、淡々とこう言った。
「お手元の請求書をご確認いただき、記載の金額で間違いないかと思います」
その瞬間、私の中で何かが静かに切れた。
「いや、記載されているから電話してるんです」
担当者は少し間を置いて、また同じような声で言った。
「システム上もその使用量で登録されていますので……」
出た。
“システム上”。
私は深呼吸した。
ここで怒鳴ったら負けだ。
相手はまた「確認します」で終わらせる。
それなら、こっちは逃げ道を塞ぐしかない。
私はスマホを片手に、すぐに準備を始めた。
まず、過去半年分のガス料金を全部出した。
毎月の使用量は、多くても2㎥前後。
今回だけ、9998.5㎥。
異常どころではない。
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