「ママ、天井から何か出てる!」
リビングで宿題をしていた長女の声に、私は反射的に顔を上げた。
最初は虫か、壁紙のめくれかと思った。
でも、長女が指差している先を見た瞬間、背筋が一気に冷たくなった。
天井から、金属のビスが突き出ていた。
しかも、ほんの少しではない。
先端がはっきり見えるほど、天井を突き破っている。
「え……何これ」
私は思わず声を失った。
場所はリビングの真上。
家族が普通に通る場所だった。
もし長女が真下に立っていたら。
もし何かの拍子に落ちたり、さらに突き抜けたりしていたら。
考えた瞬間、心臓が嫌な音を立てた。
すぐに脚立を持ってきて確認した。
見間違いではない。
本当にビスが天井を貫通している。
私はその場で写真を撮った。
正面から。
横から。
長さが分かる角度から。
照明や部屋の位置関係も入れて、何枚も撮った。
そして、位置を考えた。
うちは一階。
この真上には、二階の住戸がある。
つまり、どう考えても上から何かを打ち込んだとしか思えない。
私は一度深呼吸して、二階へ向かった。
感情的になってはいけない。
まずは確認。
そう自分に言い聞かせながら、上の部屋のインターホンを押した。
……出ない。
もう一度押した。
出ない。
三回目。
四回目。
ようやく、ドアが少しだけ開いた。
中から顔を出したのは、無表情の男性だった。
私はできるだけ落ち着いた声で言った。
「すみません。下の階の者です。今、うちの天井からビスが突き出ていまして。位置的にこちらのお部屋の真下なので、一度確認していただけませんか」
すると、男性は私の話を最後まで聞く前に言った。
「うち、関係ないんで」
一瞬、耳を疑った。
関係ない?
天井からビスが出ている。
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