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「撮ってどうすんの?」自転車走行帯を完全にふさいだタクシー運転手が、私のスマホを見て鼻で笑った。車道には車がビュンビュン、逃げ場なし。黙って会社に写真を送った数分後、運転手のスマホが鳴り出して…
2026/06/24

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「撮ってどうすんの?」

自転車走行帯をふさいだタクシー運転手は、私のスマホを見て鼻で笑った。

昨日の帰り道、私はいつものように自転車で家へ向かっていた。

車道の端には、白線で区切られた自転車走行帯があった。

車の流れも多かったから、私はそこをまっすぐ走っていた。

すると前方のタクシーが、突然スッと左へ寄ってきた。

一瞬、客を降ろすのかと思った。

でも、その止まり方を見て、私は思わずブレーキを握った。

タクシーの車体は白線ぎりぎり。

後ろ半分が、私の走る場所を完全にふさいでいた。

右側には車が次々と通っている。

無理に避けたら、車道側へ大きくはみ出すしかない。

私はベルを鳴らした。

一回だけ、軽く。

運転手はバックミラー越しに私を見た。

目が合った。

それなのに、動かない。

まるで「勝手に避けろ」と言っているようだった。

私は仕方なく止まり、少し待った。

でも、タクシーは動かない。

後ろからも自転車が一台近づいてきて、私の後ろで止まった。

その人も困ったように車道を見ていた。

私はもう一度ベルを鳴らした。

すると、運転手が窓を開けた。

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そして面倒くさそうに言った。

「ちょっとくらい待てないの?」

その言い方に、胸の奥がカッとなった。

私は急いでいたわけじゃない。

でも、ここは私が安全に走るための場所だ。

待つ待たないの話ではない。

危ないから困っているのだ。

私はできるだけ冷静に言った。

「ここ、自転車走行帯ですよ。通れないので、少し前に出てもらえますか?」

すると運転手は、またミラーを見て笑った。

「自転車なんだから、横から行けばいいでしょ」

横?

右側には車が走っている。

左はガードレール。

どう見ても、安全に通れる幅なんてない。

私はその瞬間、この人は分かっていてやっているのだと思った。

私は言い返さなかった。

怒鳴っても、きっと「面倒な自転車乗り」扱いされるだけだと思ったから。

代わりに、スマホを取り出した。

タクシーの位置。

白線。

車体が自転車走行帯をふさいでいる様子。

車のナンバー。

会社名。

点灯しているランプ。

全部、落ち着いて写真に残した。

運転手はそれを見て、また鼻で笑った。

「撮ってどうすんの?」

その言葉で、私は完全に腹が決まった。

私はその場でタクシー会社の問い合わせ先を調べた。

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そして写真を添付し、時間と場所を書いた。

「自転車走行帯を塞がれ、車道側へ出るような危険な状況になりました」

「運転手に移動をお願いしましたが、対応してもらえませんでした」

そう送信した。

運転手はまだ余裕そうだった。

「そんなの意味ないよ」

そう言いたげな顔で、ハンドルに肘をついていた。

ところが、数分後だった。

タクシーの中で、運転手のスマホが鳴った。

最初は普通の顔で出た。

でも、相手の声を聞いた瞬間、表情が変わった。

さっきまでの薄笑いが消えた。

「はい……はい、今です……」

運転手の声が小さくなった。

私は何も言わず、その様子を見ていた。

後ろにいた自転車の人も、黙って見ていた。

電話の向こうは、どうやら会社だった。

運転手は何度も「すみません」と繰り返した。

そして電話を切ると、ゆっくりドアを開けて降りてきた。

さっきまでの態度とは別人のようだった。

「すみませんでした。すぐ動かします」

私は短く答えた。

「私だけじゃなくて、ここを通る人みんなが危ないです」

運転手は何も言い返さなかった。

すぐに車に戻り、タクシーを前へ動かした。

ふさがれていた自転車走行帯が、ようやく空いた。

後ろにいた自転車の人が、小さく言った。

「ちゃんと記録して正解でしたね」

私は少しだけ笑った。

怒鳴らなくてよかった。

泣き寝入りしなくてよかった。

相手の土俵に乗らなくてよかった。

タクシーの横を通り過ぎる時、運転手は窓を少し開けていた。

私は前を向いたまま、静かに言った。

「道をふさいだのは一瞬でも、記録は残りますよ」

運転手は黙っていた。

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その沈黙だけで十分だった。

道路は、強い人だけのものじゃない。

車のためだけのものでもない。

自転車にも、歩行者にも、ちゃんと安全に通る権利がある。

たった少し車を寄せるだけ。

たった少し周りを見るだけ。

それができない人ほど、なぜか態度だけは大きい。

でも今は、言い返すより強いものがある。

写真。

時間。

場所。

記録。

そして、冷静な一通の連絡。

あの運転手は、私が何をしているのか最後まで分かっていなかった。

でも会社から電話が来た瞬間、全部分かったはずだ。

人を危険な方へ追いやっておいて、何もなかった顔では帰れない。

そういう当たり前のことを、少しは思い出してくれたらいい。

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