中3の娘が、何気ない顔で一枚の紙を差し出してきた。
「ママ、これ……夏期講習の見積もり」
私はその紙を受け取って、最初は軽い気持ちで見た。
まあ、受験生だしね。夏期講習だしね。ある程度は覚悟してるよ。
そんな余裕すらあった。
でも、右下の数字を見た瞬間、私の中の“落ち着いた母親”は一瞬で消えた。
総計、191,870円。
……え?
じゅうきゅうまん?
夏休みに?
塾で?
旅行じゃなくて?
パソコン買うわけでもなくて?
紙一枚で、こんなに心臓がぎゅっとなることある?
思わず二度見した。
いや、三度見した。
もしかして一桁見間違えた?と思って、目を細めてもう一度見た。
でも、何度見てもそこには堂々と「191,870円」と書かれていた。
娘は私の顔色を見て、少し申し訳なさそうに言った。
「高いよね……」
その一言で、胸が痛くなった。
高い。
もちろん高い。
正直、かなり高い。
でも、娘が悪いわけじゃない。
中3の夏。
受験前の大事な時期。
本人なりに不安もあるし、頑張りたい気持ちもある。
それなのに、最初に出てきた言葉が「高いよね」なんて、そんなふうに気を遣わせてしまったことの方が、私はきつかった。
私は離婚して12年になる。
元夫が私名義で作った借金も、なんとか返し終えた。
その時は本当に地獄だった。
朝から正社員として働いて、家に帰れば子どもたちのこと、家のこと。
休みの日も気持ちは休まらない。
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