スーパーの棚の前で、私はしばらく固まっていた。
目の前にあるのは、いつもの片栗粉。
白い袋に、見慣れた文字。
料理をする人なら一度は買ったことがある、あの片栗粉。
なのに、値札を見た瞬間、思わず心の中で叫んだ。
「あなた、昔は98円だったじゃない……」
税込268円。
いや、わかる。
今の時代、何でも値上がりしている。
原材料も、物流も、人件費も、いろいろ事情があるのはわかる。
でも、片栗粉よ。
あなたまでそんな顔をするの?
昔の私は、片栗粉なんて何も考えずに買っていた。
唐揚げに使う。
あんかけに使う。
とろみをつける。
なくなったら、ついでに買う。
そんな存在だった。
スーパーでカゴに入れる時も、いちいち値段なんて見なかった気がする。
「片栗粉ね、はいはい」くらいの感覚だった。
それが今は違う。
値札を見る。
容量を見る。
税込価格を見る。
他のメーカーを見る。
一度手に取って、また戻す。
たかが片栗粉。
されど片栗粉。
私は昭和56年生まれのおばちゃんである。
だから、昔の記憶が多少あいまいなのは認める。
内容量までは覚えていない。
もしかしたら、昔の98円は特売だったかもしれない。
店によっても違ったかもしれない。
でも、あの頃は確かに、もっと気楽に買い物ができた。
100円玉一枚で、何かしら買えた。
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