その日は、雪と雨が同時に降ってきた。
私は出先にいた。
スマホの天気通知を見た瞬間、頭に浮かんだのはベランダの洗濯物だった。
朝、急いで干してきたシーツと服。
あのまま放っておいたら、全部びしょ濡れになる。
私は買い物を切り上げて、急いで自宅マンションへ戻った。
マンション前に車を寄せた。
エンジンは切っていない。
ハザードもつけた。
本当に、洗濯物だけ取り込んですぐ戻るつもりだった。
階段を駆け上がり、ベランダの洗濯物を抱え込むように取り込んだ。
濡れかけた服を部屋に放り込み、すぐ車へ戻った。
時間にして数分。
長くても5分ほどだったと思う。
なのに、車の前には警察官が立っていた。
一人じゃない。
数人いた。
フロントガラスには、もう紙が貼られていた。
駐車違反。
反則金、1万5000円。
一瞬、頭が真っ白になった。
「え、待ってください。今戻ったばかりです」
私は息を切らしながら言った。
「洗濯物を取り込んだだけです。エンジンも切っていません。ハザードもつけています」
でも返ってきた言葉は、淡々としていた。
「ここは駐停車禁止です」
「停車ではなく、駐車扱いになります」
私は思わず言い返しそうになった。
たった数分なのに。
目の前が自宅なのに。
事故でも買い物でもなく、雨雪から洗濯物を守っただけなのに。
でも、その時ふと思った。
ここで怒っても、何も変わらない。
相手は「規則です」と言うだけ。
こちらがどれだけ悔しくても、感情は証拠にならない。
私は深呼吸した。
そして、その場で方針を変えた。
言葉で押すのではなく、記録で返す。
車に戻って、まずドライブレコーダーを確認した。
映像には、私が車を停めた瞬間から戻ってくるまでが残っていた。
ハザードが点いていること。
エンジンがかかったままだったこと。
私が車から離れた時間。
警察官が近づいてくるタイミング。
全部、映っていた。
私はその場で映像を保存した。
次にスマホの位置情報履歴を確認した。
自宅マンションへ戻った時刻。
滞在時間。
再び車へ戻った動き。
それも記録に残っていた。
さらに、帰宅前に立ち寄ったコンビニのレシートもあった。
時刻が印字されている。
これで、私が長時間どこかへ行っていたわけではないことは説明できる。
でも、それだけでは弱い。
私は周囲を見渡した。
そして気づいた。
道路標識が、見えにくい。
駐停車禁止を示す標識の一部が、街路樹の枝と近くの看板で隠れていた。
車を寄せた方向から見ると、肝心の表示がかなり読み取りづらい。
「これ、ちゃんと見える状態だったの?」
私はすぐに写真を撮った。
車を停めた位置。
道路の端。
標識までの距離。
運転席から見た角度。
マンション入口との位置関係。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください