最初に違和感を覚えたのは、何気なく見たレシートだった。
いつもの薬局で、洗剤と風邪薬を買っただけ。
会計の時には、ちゃんと自分のポイントカードを出した。
店員さんもいつも通りで、「ポイントお付けしますね」と笑っていた。
でも帰宅してレシートを見た瞬間、手が止まった。
会員番号の下4桁が、私の番号じゃない。
私の番号は8621。
でもレシートに印字されていたのは4306。
最初は見間違いだと思った。
もう一度見た。
何度見ても、4306。
しかも累計ポイントが、思っていたより少ない。
背中がすっと冷たくなった。
カードはずっと財布の中にある。
家族にも貸していない。
誰かが私のポイントを使ったのか。
それとも、情報が漏れているのか。
怖くなって、すぐ店に電話した。
「レシートの会員番号が違うんですが」
電話に出た店員は、少し間を置いてから言った。
「ああ、システムの表示がたまにそうなることがあります。特に問題ないと思いますよ」
その軽い言い方に、少しだけ安心しかけた。
でも、なぜか胸のざわつきが消えなかった。
翌日、私は引き出しに入れていた過去のレシートを全部出した。
同じ薬局のものだけを並べた。
すると、出てきた。
一枚だけじゃない。
二枚目にも4306。
三枚目にも4306。
四枚目にも4306。
日付はバラバラ。
でも、時間帯はだいたい同じ。
そして担当していたレジも、ほぼ同じだった。
私は一気に冷静になった。
これは偶然じゃない。
私は4枚のレシートをスマホで撮影した。
会員番号。
購入時刻。
金額。
付与ポイント。
累計ポイント。
全部赤ペンで印をつけた。
そして、もう一度その店へ行った。
ちょうど同じ店員がいた。
私はレジに行き、レシートを一枚出した。
「この会員番号、私のものではありません」
店員は一瞬だけ目を泳がせた。
でもすぐに笑った。
「お客様の勘違いではないですか?」
私は二枚目を置いた。
「これも違います」
三枚目を置いた。
「これも」
四枚目を置いた。
「これも全部、4306です」
その瞬間、店員の顔色が変わった。
さっきまでの笑顔が、消えた。
「たまたま……機械の不具合かもしれません」
私は言った。
「機械の不具合が、毎回同じ番号にだけ出るんですか?」
店員は黙った。
私は続けた。
「店長さんを呼んでください」
しばらくして、店長が出てきた。
最初は穏やかに対応していたけれど、4枚のレシートを見た瞬間、表情が硬くなった。
私は淡々と説明した。
「私の会員番号は8621です」
「でも、複数回4306が印字されています」
「同じ店舗、近い時間帯、同じレジです」
「システムエラーなら、なぜ毎回同じ番号になるのか確認してください」
店長は奥へ入り、バックヤードで確認を始めた。
その間、店員は目を合わせなかった。
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