発車前の新幹線に乗った瞬間、私は思わず立ち止まった。
自分で予約した大型荷物スペースが、見知らぬスーツケースで完全に埋まっていた。
一つ、二つじゃない。
5個。
大きなスーツケースが隙間なく押し込まれていて、私と同僚の荷物を置く場所なんて、どこにもなかった。
私はスマホで予約画面を確認した。
座席番号も合っている。
大型荷物スペース付きの座席も、間違いなく私たちの予約分だった。
なのに、そこにある荷物は全部、私たちのものではない。
同僚が小声で言った。
「これ、どうする?」
発車ベルが鳴り始めた。
私は車内を見渡して、少し大きめの声で聞いた。
「すみません、この荷物の持ち主の方いますか?」
誰も答えない。
もう一度、声を上げた。
「ここ、予約している大型荷物スペースなんですが、このスーツケースの方いませんか?」
それでも、誰も名乗り出なかった。
近くに座っていた乗客の一人が、気まずそうに小声で教えてくれた。
「さっき、何人かが置いて、そのまま前の車両に行きましたよ」
その瞬間、胸の奥がカッと熱くなった。
置き間違いじゃない。
分かっていて置いている。
自分たちの近くに置けないから、予約している人のスペースを勝手に使っただけ。
通路にも少しはみ出していて、後から乗ってきた人が体を横にしないと通れない状態だった。
同僚はため息をついた。
「もう発車するし、どかす?」
でも私は首を振った。
勝手に他人の荷物を動かしたら、今度はこちらが悪者にされる。
こういう時こそ、感情で動いた方が負ける。
私はまず、スマホで写真を撮った。
予約スペースを占領している5個のスーツケース。
私たちの予約画面。
座席番号。
通路の狭さ。
全部、顔は映さず、状況だけを残した。
そしてすぐに車掌さんを探した。
発車直前で忙しそうだったけれど、私はできるだけ短く説明した。
「予約した大型荷物スペースが、他の方のスーツケースで埋まっています」
「持ち主を呼びましたが、誰も名乗り出ません」
「私たちの荷物が置けず、通路も狭くなっています」
車掌さんは予約画面を確認して、すぐに表情を引き締めた。
「確認します」
その後、車内放送が入った。
「大型荷物スペースにお荷物を置かれているお客様は、お近くの係員までお申し出ください」
一回目。
反応なし。
二回目。
まだ誰も来ない。
三回目。
ようやく前方の車両から、数人がだるそうに戻ってきた。
そのうちの一人が、こちらを見るなり不満そうに言った。
「え、何ですか?」
私は言った。
「この荷物、あなた方のですか?」
「そうですけど」
「ここ、私たちが予約しているスペースです」
すると相手は、まるで面倒くさそうに肩をすくめた。
「不就放个箱子吗?少しだけですよ」
その言い方で、私は完全に冷めた。
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