夫から、ほぼ50回も電話が来た。
でも、私は1回も出なかった。
義母が入院して、もう1週間になる。
夫の実家は、
「私に看病に来てほしい」
そればかり言ってくる。
でも正直に言う。
休みが取れないわけじゃない。
ただ、心の底から行きたくない。
スマホはバッグの中で震え続けて、
熱くなるほどだった。
画面が何度も光って、表示されるのは夫の名前。
私はその文字をずっと見つめて、
指を通話ボタンの上に置いたまま、
結局、画面を消した。
職場の人たちは言う。
「休んで行ってあげなよ。
年寄りなんだし。」
でも、私だけは分かっている。
問題は休みじゃない。
あの頃の苦しかった日々が、
私の中でまだ終わっていないだけ。
子どもが生後2ヶ月のとき。
私は乳腺炎で、38.8度の高熱。
赤ちゃんを抱いて泣きながら、
義母に電話した。
「半日だけでいいから、来てほしい。
病院で薬をもらいたい。」
義母は、少し黙ってから言った。
「友だちと朝市に行く約束してるの。
もう決まってるから無理。」
子どもが1歳半で歩き始めた頃。
料理中に転んで、手首を骨折した。
医者に「3週間は安静」と言われた。
夫は仕事、家には誰もいない。
また私は電話した。
「せめてご飯だけでも作りに来てほしい。」
義母はこう言った。
「あなたのマンション、エレベーターないでしょ。
膝が悪くて無理。
今はデリバリーもあるし、便利じゃない。」
その頃の私は、
片手でミルクを作り、
片手でオムツを替えていた。
夜は痛みで冷や汗が出て、
子どもは眠っているのに、
私は身動きも取れなかった。
誰も「大丈夫?」なんて聞いてくれなかった。
みんな言うのは、
「母親なんだから、我慢しなさい。」
昨日、実家の兄から電話が来た。
とても困った声で言った。
「夫の叔母さんが、うちに来て泣いた。
お母さんが病院で一人だって。
看護師にも陰で言われてるって。
君に、頼んでほしいって。」
私は静かに答えた。
「兄さん、私が冷たいんじゃない。
その『情』を、
あの人たちは私に一度でもくれた?」
電話を切った直後、
またスマホが光った。
やっぱり夫。
私は深く息を吸って、
マナーモードに切り替えた。
人の気持ちは、相互だと思う。
私が泣いて頼んだとき、
誰も助けてくれなかった。
それなのに今、
「誰もいないから」って理由だけで、
私が行くのが当たり前?
違う。
私は冷たいんじゃない。
ただ、
埋まらない傷があるだけ。
冷え切った気持ちは、
もう戻らないだけ。
正直に聞きたい。
こういう場合、
あなたなら行きますか?
「大人として我慢」しますか?
それとも、
自分の心の限界を守りますか?
あなたの周りにもいませんか?
自分が一番つらい時は誰も助けず、
相手が困ったら、
当然のように頼ってくる人。