「2000円の特売肉で一週間いけるだろ」
そう言ったのは、俺だった。
夕飯後のテーブル。
皿はもう下げられているのに、空気だけが重かった。
「食費かかりすぎなんだよ」
俺はスマホの家計アプリを見ながら言った。
「特売の2000円の肉あるだろ。あれで一週間いける」
「一家3人で月6万あれば十分だろ」
向かいに座る妻は、小さく息を吐いた。
「野菜…最近高いし」
「ガス代も上がってる」
「お米も値上がりしたし」
「調味料も切れてて…」
「言い訳ばっかだな」
俺は遮った。
そして、言ってはいけない一言を吐いた。
「働いてないんだから、工夫くらいできるだろ」
妻は何も言わなかった。
ただ、「……そうだね」とだけ言った。
その沈黙の意味を、俺は知らなかった。
次の日の昼。会社の休憩室。
いつも通り弁当箱を開けた。
中身を見て、手が止まった。
白いご飯も、野菜も、副菜もない。
あるのは、
冷えた、ただ焼いただけの豚肉が一枚。
味付けもなし。
色もない。
それだけ。
昨日俺が言った「2000円の肉でいい」が、
そのまま形になっていた。
俺は何も言わず、弁当のフタを閉めた。
午後、妙に腹が減るのが早かった。
仕事帰り。
いつもはまっすぐ帰るのに、
その日はなぜか足がスーパーに向いた。
野菜コーナーで立ち止まる。
キャベツ、高い。
トマトも高い。
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