あの日の放課後、私は米屋の前で足を止めた。
シャッターが、ぴったりと閉まっていた。
おかしい。
その店は、私が小学生の頃から、昼間に閉まっているのを見たことがなかった。
近づこうとした瞬間、
「バン」と車のドアが閉まる音がして、すぐにまた開いた。
振り向くと、店の前に古い白い乗用車が停まっていた。
トランクが開いていて、そこに荷物を詰め込んでいるのは、いつもカウンターの向こうで優しく笑ってくれていた、あの人だった。
厚手のコートを着て、髪はいつものように低くひとつに結ばれている。
でも顔色はいつもよりずっと白く、冬だというのに額には汗が浮かんでいた。
こめかみの髪が、湿って頬に張り付いている。
動きは早いけれど、どこかちぐはぐだった。
袋をひとつ落としてしまい、中身が少しはみ出した。
書類の束、きれいに畳まれていない服、それから古びたビニール封筒。
彼女ははっとして振り返り、私を見るなり、体を強張らせた。
私も、なぜ立ち止まったのかはわからない。
いつも米や灯油を買いに来ると、
「一人で来たの?重くない?」
そう言って笑ってくれたからかもしれない。
それとも、ただ、あまりにも必死そうだったからか。
「……手伝いましょうか」
自分の口からその言葉が出た瞬間、少し後悔した。
今の彼女は、誰にも近づいてほしくないように見えたから。
けれど彼女は一瞬呆然としたあと、
今にも壊れてしまいそうな表情で、言った。
「……いいの?」
そして、すぐに。
「本当に?」
私は、黙ってうなずいた。
彼女はすぐに別の袋を差し出してきた。
驚くほど軽い。
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