座った“0.5秒”で、戦争が始まった。
「失礼します」
そう言って、三人掛けの左端――さっきまで空いていた席に、私は腰を落としかけた。
半分、座れた。
いや、正確には“座れた気がした”。
その瞬間。
隣の女が、身体をスッ…と私の方へ傾けた。
同時に、もう一人がバッグを“バン”と座面に投げ置いた。
私の尻は、行き場を失った。
――結果、私は。
座席の端に、半分だけ乗ったまま固まる。
俗に言う「半ケツ」状態。
……いや、もっと上品に言うなら「未完成の着席」。
でも車内は混雑。後ろからは人の圧。
立ち直る余地ゼロ。
私は笑顔を作っている。
心の中は叫んでいる。
(おい。いま私、公開処刑されてない?)
二人は、見るからに“お出かけテンション”。
ダッフィーのぬいぐるみ。
バッグにぶら下がった笑顔が、こっちの地獄を照らしてくる。
そして追い打ち。
隣の女が、わざとらしく首元をパタパタさせながら言った。
「ねぇ、すっごいアツいんだけど~」
……出た。
“熱い”を合図に、こっちを値踏みするゲーム。
視線が来る。
チラ見。
にやっ。
クスクス。
(熱いのはお前らの民度だよ)
私はまだ痩せていた頃の話。
それでも彼女たちは、私を「邪魔なもの」と決めつけた。
そして、決めつけた相手には何をしてもいいと思ってる。
――そういう種類の人間。
私は、怒鳴らない。
怒鳴った瞬間に、
“面倒な人”のラベルを貼られるのは、こっちだから。
だから私は、丁寧に。
「すみません、こちら空いている席なので、座らせていただきますね」
声の温度は低め。
でも、言葉ははっきり。
すると彼女たちは、同時に“被害者の顔”をした。
(出た~~~~!
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