「また元旦那からLINEが来た。
最初に送られてきたのは、真っ黒に焦げた唐揚げの写真だった。」
皿の上に山のように積まれた黒い塊。
ほとんど炭だった。
そのあと、立て続けにメッセージが届いた。
「料理失敗した。クソ不味かった」
「やっぱり真央のご飯が食べたい」
「料理なんて簡単やろ思ってたけどやってみたら難しいね」
「俺には絶対出来ないことがよくわかった」
「戻ってきて欲しい」
「また真央の唐揚げが食べたいです」
思わず笑ってしまった。
離婚したとき、あれだけ偉そうだった人が、
今は焦げた唐揚げの写真を送ってきている。
結婚していた頃、彼は典型的な大男子主義だった。
「女は外で働く必要ない」
「家にいればいい」
「家事くらい出来て当たり前」
そう言って、私が働こうとするのを何度も止めた。
でも本人はどうだったかというと。
仕事は長続きしない。
家のことは何もしない。
家事は全部、私。
それでも彼は、いつも言っていた。
「俺が養ってやってるんだから」
実際には、私の貯金で乗り切っていた時期もあったのに。
そんな生活に限界が来て、私は離婚した。
それからしばらくして、私は新しい人と出会った。
穏やかで、普通に働いて、
普通に「ありがとう」と言える人だった。
ようやく、普通の生活を取り戻したと思っていた。
でも、元旦那はそこで止まらなかった。
ある日、彼が私の彼氏に連絡してきた。
突然のDMだったらしい。
そこに書いてあった言葉を見て、私は思わずため息をついた。
「その女、俺の家庭を壊した女だ。」
さらに続けて、
「まだ俺の女みたいなもんだから。」
さすがに呆れた。
離婚してどれだけ経っていると思っているのか。
彼氏はそのメッセージをそのまま私に送ってきた。
「こういうの来てるけど大丈夫?」
怒るでもなく、ただ確認するような口調だった。
私はすぐに返信した。
「元旦那。気にしないで。」
すると彼は、
「うん。全然気にしてないよ」
と返してきた。
そして最後に一言。
「料理できない人が、よく言うね。」
思わず笑ってしまった。
一方、元旦那のLINEはまだ続いていた。
「真央の唐揚げが恋しい」
「やっぱり家には女が必要」
「お前がいないと生活回らない」
そして最後に、
「戻ってきて欲しい」
まるでポエムだった。
私は全部スクリーンショットを撮った。
そして、そのまま弁護士に送った。
事情はすぐ理解してもらえた。
数日後。
元旦那のところに、弁護士から内容証明が届いた。
その日の夜。
またLINEが来た。
「どういうこと?」
「弁護士とか大げさじゃない?」
「そんなつもりじゃなかった」
どうやら急に慌てたらしい。
さらに続けて、
「真央、話し合おう」
「俺たちやり直せると思う」
もう、笑うしかなかった。
私は一度だけ返信した。
「ポエム書いてる暇あるなら養育費払え。」
それだけ送って、
そのままブロックした。
スマホを置いた瞬間、妙に静かだった。
もう、あの人のLINEが届くことはない。
そして私は思った。
あの黒い唐揚げ。
たぶん、
これからもずっと焦げたままだろう。
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