駅のベンチでバッグを開けた瞬間、ホテルの目覚まし時計が中から出てきて、血の気が引いた。
盗むつもりなんて一ミリもない。でも結果だけ見れば、完全に「備品を持ち帰った人」だ。
すぐにホテルへ電話し、朝イチで郵便局へ走ったけれど、頭の中ではずっと「清掃員さん困っただろうな」「最悪、疑われても仕方ない」がぐるぐるしていた。
「忘れただけなら仕方ない」派もいれば、「ホテル備品を持ち帰るのはアウト」派もいると思う。
でも最後にホテルの人から返ってきた一言で、申し訳なさと優しさが一気に押し寄せた。
その日は、少しだけ寝不足だった。
前日の夜、ホテルの部屋で明日の予定を確認して、念のため目覚まし時計を枕元に置いた。
スマホのアラームもセットした。
でも、知らない土地で寝坊するのが怖くて、ホテルの時計まで使った。
朝はちゃんと起きられた。
チェックアウトの時間にも余裕があった。
私はいつも、ホテルを出る時だけは妙に真面目になる。
ベッドの周りを整えて、ゴミをまとめて、洗面台の水滴も軽く拭く。
「清掃員さんが少しでも楽ならいいな」なんて思いながら部屋を出るタイプだ。
なのに。
駅に着いて、切符を確認しようとバッグを開けた瞬間、見覚えのある小さな時計が出てきた。
一瞬、脳が止まった。
え。
これ、私のじゃない。
ホテルの目覚まし時計だ。
次の瞬間、顔が一気に熱くなった。
いや、熱いというより、血の気が引いた。
「やばい」
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