「これ、本当に今日買った分だけ?」
レジを出たあと、妻は思わずレシートを見直した。
米も、卵も、野菜も、特別なものは何一つ買っていない。
安い店を選んで、特売品を探して、余計な物は全部我慢した。
それなのに会計額だけは、前より確実に重くなっている。
帰宅後、夫にレシートを見せた瞬間、思わず空気が変わった。
買ったのは、米、卵、牛乳、豆腐、もやし、キャベツ、にんじん、ウインナー、食パン。
どれも家にあって困らない物ばかりだ。むしろ、必要最低限と言っていい。
以前ならこのくらいの買い物をしても、ここまで気持ちが沈むことはなかった。
「また高くなってる……」
妻が小さくつぶやくと、隣で袋を持っていた夫が言った。
「でもさ、買い方をもう少し考えれば抑えられるんじゃない?」
その言い方に、妻の手が止まった。
「考えてるよ」
「一番安い店に行ってるし、特売も見てるし、献立だって変えてる」
「前みたいに気軽にお菓子も買ってないし、外食も減らしてる」
夫は少し気まずそうな顔をしたが、それでも続けた。
「いや、でも何か無駄があるのかもって……」
その一言で、妻の中にたまっていたものが一気にあふれた。
「無駄って何?」
「米はいるでしょ。卵もいるでしょ。野菜もないと困るでしょ」
「節約してるつもりじゃないの。してるの」
「それでも足りないから苦しいんじゃない」
その声は、思っていたより強くなっていた。
本当は怒りたかったわけじゃない。
でも最近ずっと、買い物に行くたびに同じことを思っていた。
卵だけが高いわけじゃない。
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