1. 減り続ける手取りと、見えない「専業主婦への罰」
夜8時、狭いキッチンに味噌汁の匂いが漂う。45歳の私は、夫が持ち帰った給与明細を食卓に広げ、ため息をついた。
「また、控除額が増えてる……」
夫の年収は額面で1000万円。世間からは「高収入の片働き世帯」と羨まれるが、実際は税金制度から狙い撃ちにされる“サンドバッグ”だ。手元に入る前に、所得税、住民税、社会保険料などでなんと約30%も天引きされてしまう。物価は高騰しているのに、基礎控除額はスズメの涙。普通の家庭は、1馬力ではもう限界をとっくに超えている。
何より理不尽なのは、同じ「世帯年収1000万円」でも、夫500万・妻500万の共働き世帯より、私たち片働き世帯の方が税率も保険料率も圧倒的に高いことだ。夫婦で役割分担して稼いでいるのに、今の税制はまるで「あなたが外で働かないから、罰金を払いなさい」と私を責め立てているようだ。
これまでは「配偶者控除」や「第3号被保険者」があることで、この不公平な負担になんとかバランスが保たれていた。
それが今、「主婦年金縮小」というたった一言で、最後の命綱すら無情にも断ち切られようとしている。
2. 「働けばいい」という暴力と、置き去りにされる弱者
「外で働けばいいじゃないですか。社会は女性の進出を求めています」
テレビの中で、スーツ姿の政治家がドヤ顔で語る。その言葉に、胸がチクッと痛んだ。
働きたくないわけじゃない。働けないのだ。
隣の部屋では、10歳の息子がブロック遊びをしている。彼には軽度の発達障害があり、少しの環境の変化でパニックを起こしてしまうため、一人で留守番させることはできない。子どもの将来のために少しでも稼ごうとパートに出ても、子どもの状態に合わせて何度も仕事を変えざるを得なかった。
「制度を決めている人たちは、本当に弱者の現実を知っているの?」
障害児の親の中には、いざとなったら生活保護を……と考える人もいる。でも私は、できる限り自分の力で頑張りたかった。それなのに、配慮もないまま制度だけが変更されたら、家庭に縛り付けられた私のような母親は、将来「無年金の下流老人」になるしかないのだろうか。
おまけに私は「就職氷河期世代」。若い頃は社会から正社員の椅子を奪われ、中年になった今は国の財政難を理由に切り捨てられる。バブル期に大量採用された上の世代は手厚い年金をもらって逃げ切るのに……。時代に何度も見捨てられるこの絶望感、誰に分かってもらえるのだろう。
週末、公園で25歳の姪・美穂に会った。彼女は今、婚約者との結婚を迷っているという。
「おばさん、今の世の中おかしいよ。
彼氏、『産休中の生活費も、出産費用も折半ね』って言うんだよ?」
美穂は自嘲気味に笑った。「多様性って言いながら、社会保険料のために女性を無理やり働きに出させてさ。産んだ後、子どもと一緒にいる時間なんて全然ない。私たち、仕事中にこっそり美容外科に行ける国会議員とは違うんだから!」
私は言葉を失った。なぜ少子化が止まらないのか、その答えがここにある。
国は「女性の活躍」と綺麗な言葉を並べるが、本音はただ税金と保険料をむしり取りたいだけだ。保育環境も整わず、社会の受け皿もないまま女性を無理やり外に追い出せば、若い女の子たちはこう思うだけだ。
「体壊してまで結婚して子どもを産むくらいなら、一生独身で未産の方がマシ」
安心して専業主婦やパートの範囲で育児ができる環境がなければ、子どもなんて増えるわけがない。税金を取ることを優先する今のやり方は、まさに「少子化促進制度」だ。
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