「GW、どこ行くの?」
息子のその一言で、夕飯の食卓がふっと静かになった。
花見くらい、今年もなんとか行けると思っていた。
でも、米も卵も飲み物も、ガソリンも、もう“ついで”で済む値段じゃない。
「……今年は近場にしようか」と夫が言った瞬間、妻は思わず顔をしかめた。
そのとき息子が、小さな声で言った。――「お金、かかるもんね」
その一言が、いちばん胸に刺さった。
キッチンの横には、さっきスーパーで買ってきた袋がまだそのまま置いてあった。
米、卵、ウインナー、麦茶、子どものお菓子。
特別な物なんて何もない。むしろ、かなり抑えた方だ。
それでもレシートの合計を見たとき、妻は思わず言った。
「え、これだけでこんなにするの?」
夫は苦笑いもできなかった。
最近はスーパーに行くたびに、同じことを思う。
何か贅沢したわけでもない。外食を増やしたわけでもない。
ただ普通に暮らしているだけなのに、普通がどんどん高くなっていく。
それでも息子は春が好きだ。
去年、川沿いの公園でシートを敷いて食べたお弁当が楽しかったらしく、
「今年もお外でおにぎり食べたい」
と何度も言っていた。
妻はその言葉を覚えていたから、さっき少しだけ明るく返したのだ。
「お花見の延長で、ちょっと遠くの公園でも行く?」
けれど、その“ちょっと”が、もうちょっとでは済まない。
車で行けばガソリン代。
着いたら駐車場代。
途中で「のど渇いた」と言われれば飲み物代。
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