その時は、本当に一瞬、何が起きたのか分かりませんでした。
自販機でチップスターを買っただけなんです。
130円。
200円を入れて、ボタンを押しただけ。
ガタン、と商品が落ちてきて――
そのあと。
ジャラジャラジャラッ。
明らかにおかしい音がしました。
取り出し口を見たら、硬貨がどんどん出てきている。
嫌な予感がして数えてみたら、
840円。
え?
一瞬、手が止まりました。
200円しか入れてないのに、840円。
計算が合わないどころの話じゃない。
正直、少しだけ迷いました。
このまま何も言わずに帰るか。
それとも、ちゃんと伝えるか。
でも、こういうのって後で面倒になる気がしたんです。
防犯カメラとか、記録とか。
だから私は、そのまま近くの受付に行きました。
「すみません、自販機ちょっとおかしいかもしれません」
そう伝えました。
わざわざ「お釣り多いです」とまでは言っていません。
でも、壊れていることはちゃんと伝えたつもりでした。
普通なら、ここで確認が入ると思っていました。
でも返ってきたのは、想像とまったく違う反応でした。
「今ちょっと対応できないので、後でいいですか?」
え?
今、言ってるんだけど。
一瞬、言葉の意味が分かりませんでした。
こっちはわざわざ来てるのに、
“後で”って何?
私は少し待ちました。
でも誰も来ない。
さすがにもう一度声をかけました。
「さっきの件なんですけど」
すると今度は、明らかに面倒くさそうな顔でこう言われたんです。
「後で確認しますから」
それだけ。
こちらをほとんど見もしない。
その瞬間、何かが冷めました。
ああ、そういう扱いなんだ。
こっちはちゃんと伝えてるのに、
向こうはまったく受け取っていない。
その時、頭の中でひとつだけ思いました。
これ、私の問題?
私はやることはやった。
壊れてるかもしれないって伝えた。
でも、相手は対応しなかった。
だったら――
私はそのまま、その場を離れました。
正直、少しモヤモヤはありました。
でも、それ以上に、
「ここまでやって無視されるなら、もういいか」
という気持ちの方が強かった。
数分後。
後ろから声が聞こえました。
「すみません!」
振り返ると、さっきのスタッフが走ってきていました。
さっきとは違う顔。
明らかに慌てている。
「さっきの件なんですけど…」
私はその瞬間、少しだけ考えました。
そして、こう聞きました。
「どうしました?」
スタッフは少し言いにくそうにしてから、
「やっぱり確認したら、お釣りが多く出ていて…」
と言いました。
私は、何も言いませんでした。
ただ、次の言葉を待ちました。
「返してもらえますか?」
その一言。
その瞬間、正直ちょっとだけ笑いそうになりました。
さっきは対応できないって言ったのに。
後でいいって流したのに。
今になって、それを言うんだ。
私は静かに言いました。
「さっき、伝えましたよね?」
スタッフは少し黙りました。
私は続けました。
「その時、対応できないって言ったのはそっちですよね」
空気が止まりました。
責めるつもりはなかったです。
でも、事実としてそうだった。
私は嘘は言っていないし、隠したわけでもない。
壊れてるかもしれないって、ちゃんと伝えた。
それをどう扱うかは、そっちの判断だったはずです。
スタッフは何も言えなくなっていました。
そのまま数秒、沈黙。
そして、小さく「すみません」とだけ言いました。
私はそれ以上何も言わず、そのまま帰りました。
正直、この話をすると、いろんな意見があると思います。
「ちゃんと最初から言うべきだった」
「返すのが普通でしょ」
たしかに、それも分かります。
でも私はこう思っています。
最初に対応してくれていれば、普通に返していました。
わざわざ伝えに行って、
時間を使って、
それでも無視された。
その時点で、この話は終わっていたんじゃないかと。
問題は840円じゃない。
対応です。
相手の態度ひとつで、
人の判断ってこんなに変わるんだなと、今回よく分かりました。
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