「初デートのあと、“3,885円振り込んでください”ってLINEが来た。」
映画とポップコーン代らしい。
正直、一瞬ネタかと思った。
でも、次のメッセージを見て固まった。
「一回きりの人には奢りません。」
「他にお金をかけたい子がいるので。」
——ああ、そういう“ランク付け”なんだ。
じゃあこっちも、
その基準でいかせてもらうね。
スマホを置いて、しばらく天井を見た。
怒りというより、妙に冷静だった。
奢る奢らないは自由だと思ってる。
割り勘だって全然いい。
でも、“価値がないから出さない”って言い方は別だ。
しかもそれを、わざわざ後から送ってくるあたり、
完全に「処理」なんだなって思った。
私はもう一度LINEを開いた。
送られてきた明細を見直す。
映画チケット1900円
ポップコーンとドリンク870円
おつまみ1115円
合計3885円
……細かい。
ここまできっちりしてるのに、
人への扱いはずいぶん雑なんだなって、少し笑えた。
とりあえず、私は返信した。
「内訳、確認しました。」
すぐ既読がつく。
「ありがとうございます。振込お願いします。」
その一文、ほんとに事務的で、逆に感心した。
私は一度画面を閉じた。
そのあと、最初のやり取りから全部見返した。
誘われた時の会話。
当日のやり取り。
帰り際の「楽しかったです」。
そして、今のこの請求。
全部、スクショした。
一枚ずつ、丁寧に。
証拠とかそういうつもりじゃなくて、
ただ、この違和感をちゃんと形にしておきたかった。
そのあと、私は振り込んだ。
3885円。
——じゃなくて、3886円。
1円だけ、多く。
そして、メッセージを添えた。
「3886円、振り込みました。」
「1円は、勉強代です。」
既読。
少し間が空いてから返信が来る。
「……どういう意味ですか?」
私はすぐに返した。
「そのままの意味です。」
「“一回きりの人にはお金をかけない”っていう基準、
とても分かりやすかったので。」
「こちらも、その基準で対応させてもらいます。」
既読。
しばらく返信が来ない。
その沈黙で、なんとなく分かった。
たぶん今、どう返すか考えてる。
でも私は、もう一通送った。
「あと、一応お伝えしておきますね。」
「このやり取り、全部記録してます。」
既読がつくのが早かった。
「いや、ちょっと待ってください」
「そういうつもりじゃなくて…」
さっきまでの“事務的な人”とは別人みたいな文章だった。
私は短く返す。
「“払っていただければ連絡しません”って書いてありましたよね?」
「どういう意図だったのか、第三者に見てもらうか検討してます。」
既読。
すぐに返信。
「それは大げさじゃないですか?」
私はそのまま、一枚のスクショを送った。
彼の言葉。
「他に進展してる子がいるので、その子にお金を使いたいです。」
そして一言。
「この子、知り合いかもしれないので。」
——既読がついたあと、しばらく動かなかった。
数分後、メッセージが来る。
「本当にやめてください」
「こちらの言い方が悪かったです」
「請求は取り下げます」
さっきまでの“ランク付け”は、どこにもなかった。
私はその文章を見ながら、少しだけ息を吐いた。
やっぱり、こういうことなんだと思った。
お金の問題じゃない。
その使い方と、
人への見方が、そのまま出るだけ。
最後に、私は一通だけ送った。
「安心してください。」
「もう関わるつもりはないので。」
既読。
返信は来なかった。
そのまま、ブロックした。
たった3885円。
でもあのやり取りで、
その人の価値観は全部見えた。
正直、あの1円が一番意味あったと思ってる。
これって、
私が気にしすぎ?
それとも、普通にアウト?
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