「『お前のとこだけ畑が悪いな』と義父に言われた瞬間、私は箸を置いた。」
正月だった。
長男家族、次男家族、そして私たち三男夫婦。子どもたちも集まり、テーブルはいっぱいだった。
長男のところは、男の子と女の子。
次男のところも、男の子と女の子。
そして、うちだけ。
男の子二人。
義父は酒を飲みながら、笑って言った。
「お前のとこだけ畑が悪いな。」
まるで冗談のように。
でも、その言葉は冗談では済まなかった。
テーブルの空気が、一瞬止まった。
長男夫婦も、次男夫婦も、何も言わない。
誰も止めない。
私はしばらく黙っていた。
正月だし、子どももいるし、波風は立てたくなかった。
だから、今までずっと我慢してきた。
でも、その日はどうしても飲み込めなかった。
私は静かに言った。
「そうですか。
でも、この家に住めてるのは、私の実家のお金のおかげですよね。」
空気が凍った。
この家は、もともと義実家のものではない。
夫が三男で、将来も頼れるものがないと言われたとき、義父母は言った。
「田舎なら土地も安い。
家を建てるなら、そっちの実家に少し助けてもらえないか。」
その結果、家を建てるお金のほとんどは私の実家が出した。
でも、その話は、この家ではいつの間にかなかったことになっていた。
義母が冷笑した。
「うちの息子は一銭も出さずに嫁をもらったんだからね。」
まるで誇らしいことのように言った。
胸の奥が、じわっと熱くなった。
私は夫を見た。
「あなたはどう思う?」
せめて一言、何か言ってくれると思った。
笑って流してくれるだけでもよかった。
でも夫は、ため息をついて不耐烦そうに言った。
「お前だって俺に選ばれただけありがたいと思えよ。」
その瞬間、頭の中が静かになった。
ああ、そうか。
この人は、ずっとそう思っていたんだ。
思えば、私は十八歳で彼と結婚した。
その頃の彼は、本当に何も持っていなかった。
家もない。
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